視覚行動研究所


きついPC仕事の時と、射撃で立射を撃つときだけメガネをかける。健康診断では難なく裸眼で1.5以上が出ているから、視力に問題があるわけではない。


左右の目は脳内の映像情報が整うように、小さな筋群の負荷によって、常に角度や焦点が調整されている。左右の目が元来持っているゼロ点のズレは、無意識の内に常に修正された状態で使っていることになる。このズレは、「視力」とは別に、その向きや大きさがひとそれぞれ様々で、私の場合は、右の目が元来は少し外側を向く傾向があるところを、左と合わせるべく引っ張り込むようにシンクロさせて、両眼視が成立している。(そういうのを、ちゃんと調べてもらうことができる。)
注視している領域においては、このズレは大して影響がないけれど、全体をぼんやりと大きく捉える「周辺」では、おそらくこの癖が反映されやすいのではないかと思われる。
体のバランスというのは、いろいろな感覚で不断に修正を入れ続けることで保たれているもので、視覚が負っている役割は多分大きい。射撃は静止を求めるスポーツで、バランスはまさにその命とも言える要素なので、この辺りはこだわりたいところなのだ。


そういう知識がもともと私にあったわけではない。
海外に選手として遠征したり、一瞬ではあったけれどエアライフルの立射で日本ランキング1位になったりしていた時に、私の強化を本当に考えてくださった方が一人だけおられて、その方が視覚行動研究所の野澤さんを紹介してくださった。山形県で強化キャンプを張った帰りに新潟を回って診ていただいたのが機縁で、目について考える契機をいただいた。その時に作ったメガネをこれまでずっと愛用してきた。
射撃での効果がどのくらいあったのか、そのあたりは機材を使った分析などをきちんとやっていないので、はっきりこうとは示せていない。ただ、狭い範囲で長い時間目を使う作業では、明らかに目の疲れが少なくなる。機能していることは間違いない。無意識に目がやっている「修正」は相当なもののようである。
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新潟まではなかなか足は運べないから、ずっとただ大事にメガネを使ってきたのだけれど、この度、野澤さんが関西に出張検査に来てくださる、ということなので予約を取って会場の中山まで出かけた。


8年ぶりに検査を受けた。
「相変わらずいい目をしている」との評価で、素直に喜ぶ。前回の検査から衰えているのではないかと心配したが、全般にはあまり変わっていないようだ。
相変わらず立体視が弱い。
周辺視が強い傾向の目だったのだが、近くを凝視する力は8年前よりもついていて、これは「向上」しているという。
視力自体は、あまり変わっておらず、以前から兆候があった乱視が少しはっきりと出てきているらしい。これまでの左だけでなく、右にもわずかに出てきている。


ブロックストリングやプリズムプレートを使った、修正トレーニング法を教えてもらう。
他にもいろいろな選手を見ておられるけれど、特に射撃に限っては、立体視が弱い人がライフル選手にはちらほらいるようだ。片目を(部分的とは言え)遮蔽して、単純な映像の中で勝負するから、弱くても弱点としてあまり足を引っ張られずに選手として生き残れるのだろう。


これまで使ってきたのは、射撃用にと、デザインよりレンズの大きさで選んだメガネだったので、普段使いしやすい細めのフレームで新しいメガネを作ることにした。
7年を経て、フレームがさらに軽くなっていて驚いた。届くのが楽しみである。
検査後も野澤さんとは、いろいろと眼をめぐる話を伺って楽しいひとときを過ごした。7年前もそうだったけれど、お会いするたび、発見や刺激のあることが聞ける。あっという間に時間が過ぎた。


帰りに、スポーツ賞の授賞式と国体の結団式に出て、チームのKさんたちと食事を頂いて帰った。


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