発達障害の子どもたち


発達障害の子どもたち (講談社現代新書)杉山登志郎の「発達障害の子どもたち」を読み終えた。
研修なんかに熱心に出ている人によれば、もうこの新書はすっかり「定番」なのだそうである。


杉山さんの著書は、虐待への対応で悩んでいた時に、一緒に担任していたSさんがたくさんの本の中からこれがいちばんわかりやすい、と「子ども虐待という第四の発達障害」を探しだしてきてくれた時に初めて触れた。
今回の本でも同様の虐待に関する部分があるが、虐待が脳に与える影響とはまさにその通りなのだろう、と思う。


読んでいる側と、非常に息の合う文章で、とんとんとんと頭に入ってくる。
個人的には、「交流教育」が、障害を持っている子のため、というより健常の子のためのものになっていることや、「一緒に学ぶ」ということが過大に扱われてしまいがちなことへの疑問や問題点など、支援教育の現場にいて、どうしてそういうことがもっとはっきり言われないのだろうか、と気持ち悪く思っていることも、明快に指摘していることが心強かった。
この本が「定番」なのなら、少なくとも支援教育に関わる世界では、単にその読みやすさでもてはやすのでなく、その内容の部分でしっかり理解が行き渡って行って欲しいものだ、と願うばかりである。
子ども虐待という第四の発達障害 (ヒューマンケアブックス)


現代においては教育関係に限らず、人間理解の必要な場面に、この分野の知識は必須になってきていると思う。その入口として確かなこの本は、必読なもののひとつだろう。


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