50mランクリスト


予報の通りだけれど、やたら生暖かい風が吹きまくって、雨の降らない嵐のような天気だった。


昨晩は、学年の打ち上げで久しぶりに店で飲んだ。
修了式も間近で、間違いなく打ち上げていい時期なのだが、年度末も押し迫ってから、大量に生徒指導案件が発生して、「飲酒だ」「喫煙だ」「窃盗だ」と、山のように問題を整理しているまっただ中になってしまった。
何もなくても忙しい、年度の切り替わりである「春休み」は、今からもうすでに「終わりなき泥沼」になる、ってことがわかっていて、もうなんだか、お互いやけくそ故の「親しみ」を発散させる、みたいな会になった。


ちょっと疲れていつもより1時間くらい遅めに帰り、今日の移動や試合のことも考えて、早めに風呂なんかも済ませたのだが、家事を片付ける前にフローリングの上で不覚にも寝てしまった。
「丑三つ時」になって気がついて、あわてて洗濯機を回し、台所の洗い物をセットし、目覚ましを6時にセットして寝直した。


1時間遅れの「平日」といった具合で、いつもと同じく洗濯物を干し、朝ごはんを用意して食べ、8時過ぎには3人で出発する。
第二京阪の開通日、ということが関係あるのかないのか、それともただ、いい陽気で「3連休の初日」だからか、道路は高速も地道も混雑至極で、いつもなら4-50分の行程が2時間以上もかかってしまった。
車内で娘は、終始陽気にはしゃいでいた。


実家で娘と相方を降ろし、すぐその足で射場に向かう。
10mの時と同じつもりで行ったら、射場はずいぶんさびしい様子で、なんだか肩透かしを食らった感じだった。
でもまあ、後で考えてみれば、今の近畿の射撃事情はこんなものなのだった。国体に選ばれて出るような選手を除けば、軒並み「続けてらんねえ」ような環境になってしまっていて、その通りに、みんな引っ込んでしまうか、やめてしまうか、になってしまったのである。
とても深刻なことなのだけれど、こんな状況になってもまだ、そのことの深刻さが、協会幹部にはわかってもらえていない。


さて、スモールボアを撃つのは、昨年11月の選抜クラブ対抗戦以来だ。
練習は一切できないまま、今日になってしまった。
一切撃たない間にも、学生や社会人射手の指導などは結構あって、「撃ちたいなあ、気になるなあ」と、あれこれ自分の射撃のことも考えながら、教えていた。


去年は50mに関しては、相当にひどい1年で、特に最後の11月は伏射も膝射も崩壊して終わっており、「現状」への未練はこれっぽっちも残さずに暮れた。
そのため、「原理的に正しい」、「本当はこうあるべき」、ということを他人に教えながら、自分の方も、ごっそりその通りにやってやろう、と思っていて、伏射はローサイトの新しいセッティングとフォームに変えてしまったし、膝射は、射撃ノートを繰って過去のフォームの変遷とセッティングのメモをざっと見直して、思考実験だけでだが、今年やる新しいフォームとセッティングを作っておいた。
立射はARで(大したことはないが)やっているので、そこで変わったことを、そのままスモールボアでもやってみるだけのことだ。


今日はそんな、「実験なし・練習なし」の、文字通りの「オフ」の試みを、「試合」ながらもいきなりやってみる「練習」あるいは「実験」ということになった。


しかし冒頭に書いたように、屋外で射撃をするには、めちゃくちゃな天気だった。
ゴーゴーと、地鳴りのような風の音が間断なく続く。
この能勢射撃場は、強風になると、ここまできれいに風が「巻く」ところだったとは、改めて知った。
手前の風旗が左に音を立ててはためいている時に、奥の風旗は右に音を立ててはためいている。上から見て文字通り「時計回り」に風が回っている。
次の瞬間にはそれが反対に回ったりもする。


新しいフォームながら、別に体は戸惑わず、そうしか構えられないように感じるくらいだったから、伏射の姿勢変更は一応OKだ。
でも弾着はよくなかった。
カーリングの映像のように、9点のリングの中で、中心から押し出しあって円内にひしめく、というような集弾で、95 95 94 95 379と、射撃を始めたばかりの大学生のような点数になってしまった。
風の影響はもちろんあるけれど、それより何より、単に4ヶ月ぶりの実弾発射に、指や目が戸惑っていた、というところが大きい。
4シリーズ目くらいになってやっと射撃をしている感じになってきた。
伏射についてはもう一度どこかで練習しなければ今回の変更がどう、なんて判断はできない感じである。


立射は、パーム・バットプレートの微調整が必要になっていたくらいで、それをすると、ARでやっている新しい立ち方・撃ち方ができた。最終シリーズでは97が出て、強風の中でのトータル376は、上々のパフォーマンスだったと思う。
大丈夫、成長している。


膝射は、「思考実験」だけでやった改造であるから、試射の間、実際に座ってみて感じる違和感を除くための、セッティング調整が随分と忙しかった。
右肩から首にかけての、「こうやるべし」で採用した変更は、思考実験の通りに行えて、20分あまりの「練習」で何とか撃てそうな状態に持って行くことができた。
構えた後に取るべき、「内的な筋感覚の移動」みたいなものが、思考実験の通りにはっきり行えて、大崩れしない手ごたえがあった。
風の影響をまともに受ける場面もあって、9が8発続いたりと、楽ではなかったが、374で終えた今日のパフォーマンスは、11月の大崩壊から「1発も出さずにやった修正」としては、出来すぎぐらいによく出来たのではないかと思う。


トータル1129。
あの天候の中、頭と紙の上だけでやった大変更を試した試合としては、ものすごくいい出来である。
「10mの技術の開拓のために、間口を広げたい」、なんて下心だけで取り組む50m種目だけれど、ちょっと欲目も出ちゃうなあ、というくらいの成果だった。
もともと、三姿勢がなによりも面白い、と思って、射撃を一生懸命にやっていた私である。
スモールボアを持ちたての頃に八瀬にせっせと通っていた学生時代のワクワクした感じがよみがえる、今日の射撃だった。


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