大不況には本を読む


大不況には本を読む (中公新書ラクレ)
橋本治氏の「大不況には本を読む」を読んだ。
文学者(としての立ち位置も、一目置かれつつどこにも収まらない感じの人)による、経済についての本である。


「貧乏は正しい」(や、もっと遡れば「'89」やそれ以前のさまざまな雑文集)以来、いわゆる経済や政治の現場では前提にされることのない、しかし冷静に考えれば実はそうでしょ、という絵を見せてくれる。
「現状を分析する」が高度に進んでも、結局、円でもないのにその曲線の行く先を予測するに、用いる2点の間をどんどん縮めて正確な変化率を求めるようなことばかりで、結局は時代の展開を、「未曾有」の連続としてしか認識してこれていないようなところが、経済学的なものへのそこはかとない不満なのだけれど、「『ちゃんとした』時代認識がないと小説は書けない」、という動機(おそらく)からはじまった、氏の時代観察や時代予測は、それ自体を「論拠」にはできなくても、最も示唆に富んだもののひとつで、実際のところ実用的な次元で「見通せて」いるのである。
貧乏は正しい! (小学館文庫)


今回の1冊も、大変面白く読んだ。


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