一家で伏せる


一昨日、相方から夕方にメールが入った。
急に体調が悪くなり、相方自身が吐き下しで大変なことになっている、という。
その前日から娘が下痢気味で、それがノロかロタの疑いがあったのだけれど、それが伝染ったのかもしれない。


慌てて帰ってみると、相方の母が偶然、訪れてくださったお陰で受診もし、なんとかなっていたが、かなり辛そうだった。
娘のお風呂や片づけを手伝って、眠りについたが、明け方、私も激しい下痢と嘔吐が始まり、ダウンしてしまった。
仕事にはとても行けない。


下痢はしているものの娘が一番元気で、私と相方は嘔吐の後の、少し楽な時間帯によろよろ動くという状態。熱は微熱以上には上がらないが、腰を中心に節々が痛く、寒気もする。
最寄の内科・小児科はちょうど休診日で、何とか身支度をして3人で私の実家の近くの診療所に出かけた。
慎重にハンドルを握る。腰周りが辛く、起き上がった状態では脚をじっとしているのが苦痛で、握力もない。視野も狭くなっていることを感じる。こんな風に身体の調子を崩すと、老いたときはこうなるのだろうか、など、普段はしない心細い想像が頭の中を駆け巡る。


診療所に実家から母が救援に駆けつけて、娘の相手をしてくれた。長い待ち時間、ずっと機嫌よく、ともいかなかったので、とても助かった。
三者三様に抗生物質や腸の薬などを処方してもらって、そのまま実家に厄介になった。
娘の相手を交代しながらも、それぞれ崩れるように眠った。


その日の夕方から、本格的に熱が上がり、今日も仕事には行けなかった。
先ほどようやく解熱剤の力も借りて平熱に戻った。吐き気の方も治まり、快方に向かいつつある。
外はいい天気で、窓からは暖かな日差しが差している。


節々の痛みもなくなって、少しふらつくが大丈夫そうなので、退屈そうにわいわい言っている娘をスリングで巻いて少し散歩に出てみた。
実家の近辺をゆっくり歩くのは久しぶりのことだ。家並みの様子を眺めながら、公園まで足をのばしてみる。
木々は大きくたくましく伸び、家々は手入れされながら古び、20年以上の時を経て、すっかり落ち着いた街並みになっていることに気がつく。
娘は途中で眠ってしまった。


相方は授乳の関係もあって、弱く安全な薬にしているため、少し熱が治まるまで時間がかかったが、久しぶりに娘の心配をせずに眠り、回復した。
急激に落ち込んだ不況の風の中、体調を崩している人だってあるだろう。同じ病を受けても、明日の保証もない状況にあればその辛さはいかほどだろうか、と思った。
病にあっては周囲から手を差し伸べてもらい、多少のしわ寄せはあってもひととき休んで次に備えられる職場にいる。
本当に幸せなことである。


[fin]