出発

船上からの日の出



今日、授業と終礼を終えるとすぐ、職場を出た。
国体・世界大学選手権と遠征が連続し、およそ2週間職場を離れる。


朝、職員にその旨が連絡され、夕刻には簡単な挨拶とともに好意的に送り出してもらった。
担任を持って、国体に出るのは今の職場では初めてだ。
生徒には全校的に知らせてはいないのだが、担任している学年の生徒たちは知っていて、国体後すぐ同じ会場で開催される障がい者全国大会に出場する者がたくさんいることもあり、とても身近に感じてくれている。
終礼に教室へ行くと、気の効いた生徒が黒板に大きく応援のメッセージを書いてくれていて、ちょっと感激した。
国体というイベントは、スポーツとコミュニティを結びつけるとても大切な役割を果たしていると、こんな瞬間にいつも感じる。


職場からそのまま大きな荷物を抱え、鉄路で集合場所へ行き車に乗り込む。さらに港からはフェリーで大分を目指した。
このまま家に帰ることなく、国体終了を待たず代表選手を引き連れて大分を離れ、北京へとそのまま乗り込む遠征に続いている。
前半は選手、後半は(不慣れな)監督として、落ち着かない日々の始まりだ。
朝いつもと変わらない感じで職場に向かって家を出てきたのに、と思うと、何かの間違いで帰れなくなったような、変な感じがする。


フェリーは、2等にごろ寝した熊本国体の時と違って、二段ベッドの4人部屋が用意されていた。快適な船旅に感激する。
国体用の特別便、といった趣で、客のほとんどが関係者のようだ。ラグビー、バレーボールなどのチームらしい、ユニフォーム姿の団体がいくつも乗っている。
船もテロ対策が随分と厳しくなっていて、射撃関係者は乗船にあたってかなりの特別扱いを受けた。下船もおそらく最後、すっかり船が空っぽになった頃だろう。


ゆっくり風呂に入り、ちょっと高めのビュッフェ形式の夕食を楽しむ。
部屋では、機械は新しいが電波の関係で映りの悪いTVで、K-1 World Maxを観て寝た。
もうちょっと上品にビッグマウスをたたく方法があろうに、と場外戦の映像にはうんざりしたが、魔裟斗という選手、膠着シーンが多くなりがちな格闘技において、果敢にそれを破り続ける力に長けた稀有なファイターだと感心した。


明け方に甲板に出ると、美しい日の出を観ることができた。
船はいい。
瀬戸内海は、陸も海も変化に満ちていて、のんびりしながらも退屈することがない。すぐに目的地に着いてしまうのが欠点、というくらいだ。


さて、まずは九州に上陸である。


[fin]