現役続行への紆余曲折


この週末、飛行機と夜行バスを使って新潟へ試合に行くため、宅急便で送るべく、道具類をスーツケースに荷造りした。


今回の遠征・来週の強化合宿・今月末からの国体・それに引き続いて出かける北京への遠征と、選手・監督、立場を変えながら次々と予定が待ちかまえていて、それぞれに飛行機だフェリーだ車だと交通機関が異なったり、前もっての荷物の手配が要ったり要らなかったり、重量制限があったりなかったりする。
ひとつずつならある程度対応しなれているのだが、これだけ立て続けると、捌くだけで精一杯、という感じになる。


「選手」としての今週末の用意に追われながら、その次の合宿や遠征の準備にも同時に追われているような錯覚を覚えて少し混乱する。
もちろんそんな事情に関わりなく仕事は日々続き、今は小康状態ではあるものの、開設から一回り目に特有のどこか予断を許さない緊張感が続いている。
いわゆる「オフ」だけでやれるいっぱいいっぱいに来ているな・・・と思うのだが、まだまだ甘いのだろうか。


程なく荷物は完成した。水曜日に業者に来てもらって、発送することにする。


行事のスケジュールや内容が固まるにつれ、11月の日本選手権と仕事上の大きな行事とが重なることに、つい先日気がついた。
日本選手権は、今年度国内で最重要の試合であり、ナショナルチームの選考会も引き続いて行われる。
行事の内容について手配したり確定する仕事をしながら、自分がいなくなる算段を立てるようなことをしていいのやら・・・と新しい葛藤を抱える。
しかも10月に散々穴を開けた後に、再びなんて・・・


スケジュールがバッティングする憂鬱から、試合への昂ぶりがあっさり失われることに、物悲しい気分になる。
日本選手権やナショナルチーム選考会は、(メンバーに選ばれる可能性は別にしても)本来は容易にモチベーションの上がる大会のはずだ。なのに、今の選手としての自分の状態と、仕事との葛藤で(今年最大の目標にしていたはずなのに)すっかり及び腰になってしまっている。
週末の新潟行きは社会人選手権大会なのだが、それだってNHK杯のかかる重要な試合なのに、選手として何も準備らしいことはできておらず、いろいろなことに気を取られて行く前から疲れ果てている。
しかも、練習以外のことではあれやこれやと「射撃」にまつわることに追われていて、家のこともおざなりになっている現実…。
私は何をばたばたと忙しくやっているんだろうか…。
かなり滅入る。


覚悟も決意も固まらず、くよくよしたまま、一番迷惑をかけそうな職業科の先生に10月・11月の事情を話した。


「大丈夫でしょう、いいと思いますよ。いいじゃないですか、頑張ってきてくださいよ。」


・・・即答だった。
肯定的な返事が期待できなかったわけではないが、明快に返ってくることも予想していなかった。
心の中で「ポン」と切り替わる音が聞こえるようだった。
思わぬ励ましで気持ちが変わる。


いろいろなところで支えられている、という実感に、窮地から抜け出る心地がした。
私の中に、頑張ってみようという気持ちが再び静かに染み出してくる。


[fin]