エコ・オフィス


財政再建を掲げる新知事のもと、教育現場も予算関係はすべて暫定になり、その後の見通しについても非常に厳しいものが提示されているらしい。
学校というところに限るのかどうかはわからないが、大枠で何に何円かかるかは、前年度実績から比較的容易に推測できるようで、現時点で割り当てられる見通しの予算では、この夏一切クーラーを稼動させないことにしても明らかに3月までお金が持たないという。


7月に入り、室温が32度・33度…と上がっても、部屋のクーラーは事務室で元から切られ、全く動かない。


開校3年目の校舎は、クーラーが割合よく整備されており、その分扇風機などの備品は貧弱な構成になっている。
PCなど精密機器が並ぶ情報教室やオフィスサービス実習室では、グラウンドに面した窓を開け放つのは、砂埃で機器は寿命を縮め、サーバーは暴走の恐れもあるという、ちょっとした自殺行為なのだが、「情報教室といえどもクーラー使用は今のところまかりならん」という管理職のことばであった。
生徒が出入りする教室の一部だけでクーラーを稼動させると、他でなぜ稼動させないのかという声に対応できないから、というのだが、この説明はどうなのだろう。少し情けない感じがする。
生徒への説明に「機械のため」以上に何の理由が要るのか。


しかし金がないこと自体はどうにも仕方がないので、「説明」はともかく、
「余計に高くつく恐れもありますけど、知りませんよ。」
と言って、室内で熱中症を起こされないように少しでも…、と窓を全開にするくらいが、せいぜい私にできることだ。
扇風機もなく、生徒は機械の発する熱と自分の発する熱でぐだぐだに溶けたようになっている。怒るのもかわいそうな感じだ。


私が学生の時分にはクーラーはなかったが、一昔前とは暑さの質が変わっている。
一昔前と違って、エコ・オフィスとして胸を張れば済むことなのだろうか。
なんというか公の方が幼稚な感じで、「洒落のめしてトホホと笑いに転化する」なんて気分も起きない、昨今の「貧しい」状況である。


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