ポリラッパーの使い方を学ぶ

ポリラッパーで包む



支援学校に設置された流通サービス科という学科で「職業専門科目」の内容を構築する模索は3年目の最終ラウンドに入った。傍目にはどう映っているのかわからないが、頭が爆発しそうなほどに猛烈に知恵を絞り、うんざりするような作業を積み重ねる悪戦苦闘を経て、なんとか途切れることなく生み出し続ける日々が続いている。
生徒が現場で実習に汗している時間は、私にとってはアイデアを実習の体系に仕上げるための貴重な時間でもある。


すでに今年度屈指の懸案だった印刷・製本・断裁といった一連の工程をそれぞれに実態に合う実習プログラムに仕立てて、教材を整える作業を昨日までに終わらせた。
本格的な運用に未だ漕ぎ着けていない機材たちを、実習プログラムに不可欠なものに昇華させる苦闘もあともう少しである。


今日はそのひとつ「ポリラッパー」を、食品バックヤード実習のひとつの核にするために少し出かけた。
数ヶ月前から少し早く仕事の片付いた夜に梱包を解いてフィルムをセットしたり、食品サンプルとふねを組み合わせて、我流ながらパッキングする練習をしていたが、このたび学校の近くのスーパーに、「プロ」の人のラッピングを見せて欲しい、できれば教えていただけませんか、とお願いして「OK」をいただいたので、行ってきたのである。


以前に、実習用の「模擬荷物」を作るために、ダンボールや廃PETボトルを分けていただいたりしたこともあり、このスーパーには大変お世話になっている。
「就労支援」の取り組みを進める上で、「学校」という一種の仮想空間が現実に着地するために、実際の「職場」からの協力が不可欠である。協力してくださる企業の側の「善意」には本当に感謝している。


バックヤードで、副店長さんが中心になって教えてくださった。出入りする女性スタッフや、鮮魚コーナーの担当者の方も、通りがかりに「実演」とアドバイスをくださる。


「私が習った頃は、とにかくスピード、とか言われて、こうやって膝とか使えって言われてたけど、このごろはいわへんなったなあ」
「そうそう、おれもやってたなあ、たしかに最近はせえへんね」
「こう最初にここまで巻き込んでしまうんが、早いねん」
「こうやって横は残しといて、こう内側から伸ばすように片方ずつ伸ばすと間違いがないから、初めての人にはいいよ」
「肉・魚・野菜でちょっとずつちがうんやなあ、こう魚とかはぱちっとふねと挟まって動かないように巻かなあかん、果物なんかの深いやつは引っ張ったらパックの方が負けてしまうしな」


今はパッキングをしなくなった主任さんや、まだ若いスタッフも通りがかりに加わって、(たぶん普段は話題にならないのであろう)パッキング技術についていろいろな話題が飛び交い、とても興味深かった。
いろんな人の前で練習させてもらっては、「ここが見てると簡単そうですけど、よくわからないです」とか質問して繰り返すことしばらく。
「上手やわ、これやったら大丈夫」
とおばさんや副店長さんに太鼓判をもらった。
なんとか教えられそうかな、とほっと胸をなでおろす。


店長にも許可もらってるから、といろいろなパックのサンプルまで持たせていただいて、送り出してもらった。
技術を教えていただいたばかりか、なんだか心もほっと温めてもらったようでうれしかった。


忘れないうちに、と戻ってすぐ学校のをふたたび引っ張り出してきて、再現と写真撮影にとりかかった。
秋口にはひとつの新しい実習プログラムに仕上がっているはずだ。


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