アカヒレの水槽と庭


妹の一家が遊びに来ていることもあって、昼過ぎに相方、娘とともに実家に帰った。
姪っ子たちは今日も元気だ。少し寝不足気味らしく、テンションが不安定だったが、お寿司をほおばって威勢よく遊ぶ。


2年前にエビの退避が目的で設置した、実家の食堂の出窓に置いた小さな水槽は、相変わらずとても安定している。
加温なしの年較差の大きな水中に色鮮やかにぐんぐん成長を続けるウィローモス。その隙間でアカヒレイシマキガイヤマトヌマエビが動き回っている。
ガラスはコケとりせずともぴかぴかで、ウィローモスは新芽が常に出て、すぐ水槽いっぱいになる。
すぐに薄茶色に苔むして、水草が常に活力のない我が家の水槽は比べるべくもなく、まったくうらやましい。
水温の高さが余計なコケを生み、日光ゼロで蛍光灯3本の光量が水草の生長には不足なのだろう。


ウィローモスのトリミングを頼まれて、鋏を入れながら掃除と水替えもしてしまう。
道具がないなあ、と思っていたら、華道用の球つき水差しホースが出てきた。三角コーナー用のネットを巻いて使うと、少し細いものの十分に代替品になった。
外掛け式の小さなろ過装置なのだが、作業後すぐに水は澄み渡る。


ふと外の緑も気になって、久しぶりに庭にも降りてみた。
庭師が刈り込みに来る前で、生き生きと緑が濃い。
20年前を思い起こしながら、いまや鬱蒼とした小さな森になっている庭を眺めて回る。
はじめから「庭木」として入ってきたものはともかく、ひょろっと植木鉢から小さな株を植えただけだった沈丁花南天ハナミズキヤブツバキが大きく育っているのを見ると時の流れを実感させられる。


娘を抱いて、キンモクセイに近づくと、ガサガサと音のするものがすっかりブームの娘は、嬉々として両手に葉っぱを掴み、揺らし続けた。
「自然」らしいものに触れるのは、これが初めてのはず。
雨上がりの今日の庭が彼女のひとつの「原体験」になるのかもしれないなあ、と思いながら、あらためて庭を見まわした。


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