相対性理論を楽しむ本


ちょっと前、新幹線に乗り込む前にふと立ち寄った構内の書店で、何気なく買った。「相対性理論」を楽しむ本―よくわかるアインシュタインの不思議な世界 (PHP文庫)
すぐには読まなかったのだが、何となく気になってこのたび読んでみた。


高校時代に岩波新書で一生懸命読んだことをよく覚えている(「相対性理論入門」内山竜夫)。
矛盾の生じそうな事例を見つけて、計算を積み重ねると、こういう風に「理論」が出来上がるのか、と単純な事象とシンプルな結論の間をつなぐしくみに「美しさ」を感じた。
相対性理論入門 (1978年) (岩波新書)
・・・まあ、そんな格好のいいことを言えたのは「特殊相対性理論」のところまでだったのだけれど。


佐藤勝彦氏が監修している今回の本では、
「当たり前と思われた『二つの前提』が、ニュートン力学だけでは矛盾してしまうので、『光』を中心に編みなおしてみると『時間』というのは、我々が感じているのと違って、実はこんな性質のものだったんですよ」
といった感じで、読み物風に非常にわかりやすく書かれていた。実に大胆に省けるところを省き、どこが「難しくてわかりにくいので一般向けではない」かを明示している。


一般相対性理論については、何と何がわからないと「わからない」のか、を説明した上で、(しかたなく)「イメージ」でだけ示す、という方法をとっている。アインシュタインが理論の完成にかかった時間とその間にアインシュタインが勉強しなおした様子も一緒にのべて、「一般化」することの大変さについて説明しているのがよかった。


高校のとき「一般‐」に入ったとたんわけがわからなくなったのは、まあ仕方なかったのだな、と20年を経て安心する。


ぼんやりとでも全体を俯瞰して「楽しめれば」いいと思えるのは、よくも悪くも「大人になったから」だなあ、と思う。もし高校生のときにこの本が書棚にあったら、わかりもしないのに、「わかりやすく」大胆に省かれていることに反発して、手にしなかったことだろう。
それとも、「リーマン幾何学」っていうのがわかる必要があるのかあ、とちょっとした具体的な目標を見出して、嫌いだった数学に身を入れるようになるきっかけにしていたろうか。


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