「スーパーの女」

晩御飯を食べながら、テレビをつけてみると、伊丹十三の「スーパーの女」をやっていた。
伊丹十三DVDコレクション スーパーの女

もう11年も前の作品なのだが、食肉の生産地偽装・リパックによる加工日偽装など、食品流通の裏側で起こりうる(起こっている)問題が真正面から登場して、まるで今年の様々な事件を取り上げて作ったかのように生々しかった。


また、11年前には予想もしなかったが、私が「流通サービス」について生徒たちに授業する立場になっていて、私にとっては「教科書」的にもとても興味深い作品に変わっていた。
この2年ほどの間に、実習をデザインするために大手スーパーのバックヤードを見学させてもらったり、職業訓練校や専門学校の「バックヤード業務」に関連する指導方法を調べたりした。
鮮魚や生肉、生鮮野菜などの各部門を、各商店出身のスタッフが職人集団的に取り仕切る時代から、スーパーとして効率のいい「バックヤード」へと移り変わっていく様が、コミカルタッチな味付けをしつつ作品中でしっかりと描かれており、そういう時代が間近にあったことを改めて知ることができた。この2年、当たり前のように見聞きしてきたことが、そのような葛藤とせめぎあいの結果徐々に出来上がってきたことを知って、少し感動した。宮本信子演じる井上花子が、ずばずばと、しかし暖かく粘り強く訴えかけながら変えていく様には、ひとつひとつうならされた。


コミカルなサクセスストーリーとしても十分に楽しい作品である。


当時、公開されるたび話題になる一方で、つねに前作を越えることを要求するような空気があって、今度のは面白くない、とか今度のは動員数が少ない、とかつまらない辛口批評の多かった伊丹作品。私はたいして映画について知っているわけではないけれど、ちょっと時間を隔てればどうでもよくなりそうなことでばかり、わあわあ騒がれていたような気がする。
伊丹監督には、もっと長生きしていろんな作品を撮ってもらいたかったなあ、と少ししんみりとする。


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