「FUTON」


中島京子「FUTON」を読んだ。FUTON (講談社文庫)ココ・マッカリーナの机 (集英社文庫)


「教師交換プログラム」でアメリカに渡った経験をつづった「ココ・マッカリーナの机」という作品で出会った。こころ温まるなかなかいい本だったので、エッセイストなのかな?と思ったら、著者紹介に「作家」とあり、解説では「『FUTON』がいい」、というようなことが書いてあったので、気にはなっていた。一昨年のことだったと思う。


それきりになっていたのだが、先日天満橋に出張したときに、ジュンク堂の棚に並んでいるの見かけて手に取った。


実に上手い。
明治・戦中戦後・2001年の3つの時代それぞれに、田山花袋の「蒲団」がバリエーションをなして重層する。さして面白くもない(と言われ続けてきた)「蒲団」が、アメリカ人日本文学研究者デイブ・マッコーリーの作中作「蒲団の打ち直し」として妻の視点から(正確に)描きなおされると、時代の変化に揺れる男女の滑稽さや哀しさを浮かび上がらせた小説として、読者の前によみがえる。ストーリーの進行につれ、現代の冴えない恋愛が、古臭いと思われた「蒲団」と、実はさして変わらないことも明らかになってゆく。そしてさらに登場人物たちは、そこから一歩ずつ、踏み出してゆく。
世代間の齟齬と繋がりについても、味わい深いエピソードが積み上げられ、ぐいぐいと引っ張られながらも、ずっしりした読み応えを感じられた。


他の作品も読んでみたい、と思った。


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