オンボロ再生


Windows98時代の、筐体を一見しただけで「これは年代物」と思わせるマシン。そういうものを多数投入して、うちの職場の仕事は回っている。2年前にコンピューターの操作を教える教育機関で機器の更新があって、そこで不要になったから、とまとめて譲り受けた代物だ。
今はもう2007年も暮れようか、という時期であるから、「Windows98時代」といえばもう十分に「一昔」前の機械と言うことになる。
まとめて譲り受けたもののうち、一定の台数は寝かせてあったのだが、この度、さらにネットワークの規模を拡張する必要が出てきたため、新たに配線やデスクレイアウトを修正して、これらも投入することになった。


ところが…である。
今回新たに投入しようと、出してくる機体、出してくる機体、片っ端からまともに動かないのである。
5台、6台、7台…。どいつもこいつも、電源のLEDとハードディスクのLEDは点灯し、ファンも回っているのだが、ディスクドライブのLEDが激しく点滅するばかりで、ハードディスクへのアクセス音が聞こえてこない。
これほどに同じ症状で、全部動かないのは何だか変だ。


「中古で、余所から運んできた機体だから、どっかで衝撃を受けてハードディスクが壊れちゃったんでしょう」
と大方の人は言うのだが、譲り受けてすぐ使おうとしたときには、こんなことはなかった。寝かせている間は衝撃なんか受けるはずもないし、前回のネットワーク設置の時に、予言者のように壊れてない機体ばかり偶然にうまく選べた、なんて考えにくい。
去年の春に動作確認したのに、今回動かないものまである。


ハードディスクが壊れたのかどうかは確かめねばなるまい、と思って、動いているマシンを開けてハードディスクを外し、代わりに今回動かなくて困っている機体から取り出したハードディスクを繋いでみた。
…起動する。
やはり、ハードディスクは壊れていない。


狐につままれたような心地で、仕方なくネットの検索ページにいろいろPCの症状を示すキーワードを入れて調べてみるが、うまくそれらしい情報にヒットしない…。
すっかりあきらめて、片付けて席に戻り、ため息混じりに(ちょっとマニアな)上司にちらと話してみると、「マザーボードの電池が切れてるからと違うか」と言う。


「!」


最小限の情報を保持するために、電池を備えていることは知っていたが、それが切れることでハードディスクへのアクセスもしなくなる、なんて考えたこともなかった。すぐにマシンのところに戻って筐体を開け、電池の型式を確かめると、近所の電気屋へ同じものを買いにいった。


新しい電池をセットして電源を入れると…何と、何の問題もなく機動。
次のマシンも、その次のマシンも…。
やれやれ、一段落だ。


メモリ増設して、OSを載せ替え、こいつらにはこれからもう一働きしてもらうことになる。
直接の原因は、1年あまりとはいえ、電源に繋ぐことなく寝かせたことにあるのだろうけれど、まあ、中の電池が切れるまで働かされることもそうそうはないのだろう。たくさんの「不良機」がこれで一気に「戦力」である。


PCに関する「困りごと」は、解決しない場合にはこれ以上気が塞ぐことはない、というくらいにイライラと疲れる一方、解決してみれば、あっけなく感じてしまうことが多い。
今日のも、あっけないと言えばあっけないが、ちょっとばかり感動した。


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