ラジオ・エチオピア


蓮見圭一「ラジオ・エチオピア」読了。
ラジオ・エチオピア (文春文庫)


あまり感心しない。
「水曜の朝、午前3時」の、なるほどこの部分がこの人の基底部分だったか、と2作品の重なりあっているように感じられる部分から、逆に読みとるようなことになった。


今の私は「はるか」のような女性を反射的に警戒するようになっている。強い自尊心と自信、それに必然的に伴う孤独(本人にとっては崇高)、それ故に時折わき起こる平凡を尊ぶ誘惑から来る劣等感…。
自らの過去の霧の中に思い当たる人間像が幾つか浮かび上がり、通り過ぎる。少しだけ年を取ったことを感じる。


そのような女性にどう接していくのか、そこについ関心を寄せてしまうのだが、主人公の男は、明らかに相手する力が足らず、読む方に力がこもらない。
案の定、彼は「やれやれ」と思わされる行動を積み重ねていく…。


それでも、仕事とまったくちがう時間の流れを車中の読書で楽しみ、帰れば、にぎやかに美しくなった水槽にしばし見とれて時間を忘れる…プレッシャーに落ち着かない日々を、ひとときゆるめる瞬間を大切にしていこう。


「fin」