木から


科学との馴染みぐあい、というのはいろいろなかたちがあるのだけれど、多様な生き物そのものについての「物知り」さ加減、というのは、とりわけ自分は欠けているな、とずっと感じてきた。
それぞれの領域の「大家」というのが身近にも次々と現れて、「かなわないな」とまず思ってしまう。
他人との「もの知り加減」の比較などはどうでもいいことで、のめり込めるものがでてくるかどうか、だけのことなのだが、どうもつまらないところで躓いて、劣等感みたいのだけ抱えてきたような次第だ。


樹木ハカセになろう (岩波ジュニア新書)
多少なりとも植物と縁がある分野で研究などしていたので、植物から、と学生時代に図鑑を買ったりもしたのだけれど、今回(またまた反省を込めて)ジュニア新書を手にしてみたら、「ああ、入り口を間違っていたんだな」と、自分の躓きに納得した。
葉っぱしか手がかりがなそうで、違いを見分けにくいのではないかと、避けていたところがあったのだけれど、年間を通じてそこにあり、きちんと違いが見分けれられて、長くひとつの場所を占めるだけに、人間的なエピソードにも事欠かない、「木」こそ、自然と親しむ入り口として最適なのだと、この歳にしてようやくわかった。
学生時代にはなかったいい本が、手頃なところにたくさん出た、ということもこのことにさらに追い風を吹かせている。


(樹木ハカセになろう:石井誠治)


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