脳に悪い7つの習慣


脳に悪い7つの習慣 (幻冬舎新書 は 5-1)
林成之氏の「脳に悪い7つの習慣」を読んだ。
脳の仕組みから、脳の働きを阻害している「悪い習慣」を挙げ、それをやめていくことで機能が高まる、ということを説いている。
林氏は、「〈勝負脳〉の鍛え方」で知ったが、その後学生射撃連盟の講演にお呼びしてお話を伺ったこともある。
救急の現場で脳の低温療法を発見確立し、キャリアを築いてきた臨床のお医者さんが、その知見をもとにスポーツの助言をしたら、それもスゴかったという、何とも恐れ多い方なのだが、にこやかで語り口の優しい、しかし強いエネルギーを全身から発して、滲み出るような明るさを感じさせる方である。


仕事の研修で、林成之氏の名前が出てきた時に、「あ」と気がついたのだが、脳の仕組みに基づくコーチングの需要というのは、スポーツに限るものではない。私が携わっている、発達障害を抱える人々の支援の現場は、脳に起因して生じる様々な困難、それも環境との相互作用や感情のコントロールに関わる課題に直面するものだ。何も、射撃に打って出ているときだけでなく、日常的に縁の深い話だったか、と自らの迂闊さにがっくりした。


ただ、「〈勝負脳〉の鍛え方」だけから、(タイトルのせいもあるけれど)そのつながりに気づくのはちょっと難しい。今回読んだ本書のほうが、林氏のファンダメンタルを明らかにするもので、〈勝負脳〉の方がその派生物である(林氏も本書の中で、〈勝負脳〉というネーミングはキャッチーだったけれど、脳の本来の機能が「自己保存」と「他とのつながりを求める」性質だという本質を伝えにくくし、誤解を招いた部分がある、という意味のことを書いている)。


脳の働きや構造に基づいて、(1)「興味がない」と物事を避けることが多い、(2)「嫌だ」「疲れた」とグチを言う、(3)言われたことをコツコツやる、(4)常に効率を考えている、(5)やりたくないのに、我慢して勉強する、(6)スポーツや絵などの趣味がない、(7)めったに人をほめない、という7つの習慣のまずさを解いていくわけであるが、部分部分の結論だけを見れば、そう意外なものばかりではない。しかし、それらが明快に連関しあうもので、どうすることがいいのかが、自ずとはっきりしていく様には驚きがあったし、深く頷かされた。
〈勝負脳〉でなく、この書を読んでから林さんにお会いできていたら、講演会ではもっと違った質問をしていたろうし、身構えることなく、もっとリラックスして接することもできただろう。


折りにふれ、今の私は大丈夫かなと振り返るツールとして繰り返し手にすることになりそうな1冊である。



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