岐阜へ

清流の景色



来年は、岐阜県で国体が行われる。そのリハーサルとなる、全日本社会人選手権に今年も出場した。
週末の平日を休んだり、到着翌朝に用具検査を受けてすぐ試合に臨む、ということがどうにも億劫で、日曜日のエアライフル1種目だけのエントリーにした。そう遠くないから、これなら土曜日にゆっくり移動して、日曜日の試合に出ることができる。
土曜日だけれど、保育園は体験保育があるとかで、相方と子どもたちを送り出し、簡単に家を片付けると、9時半には家を出た。
木曜や金曜の夕方に出発し、週末に2種目3種目とたくさん撃つような遠征に出なくなったのは、家庭内の車のやりくりの問題もある。今回はまた、相方の実家の車を金曜に借りていて、そちらを保育園に使い、家の車を遠征に回してもらった。


「軽自動車圏内」と高を括っていたのだが、名古屋周辺から白川町までは意外に時間がかかった。
昼過ぎに着いて、午後一番で用具検査を受けてしまおう、と考えていたが、会場下の駐車場にたどり着いたらもう13時だった。スーツケースを抱えて、待っていてくれたシャトルバスに飛び乗って坂の上の会場に入る。
射撃場は、まだ整地して日が浅いらしい、白く日差しを反射する用地に仮設されていた。岡山国体の会場を思い起こさせた。L字型に配された射撃施設の余白に立てられた簡易テントたちが、少し寂しい。手入れ室や保管庫、検査会場がその横にぽつんぽつんとプレハブで立てられている。


荷物置き場になっている、体育倉庫だったらしい小屋に入ると、学生時代からの知り合いであるY君がちょうど検査を終えて戻ってきたところだった。これ幸いと手伝ってもらう。検査会場は空いていて、スムーズに進んだ。奥では今年から始まった、射撃ジャケット類のワンタイム検査も行われていて、静岡県のよく知っている役員の方が担当をされていた。1度受けてタグを発行してもらっておくと、試合ごとの硬さ検査をパスすることができる、という制度だが、厳密にやるものなので時間がかかる。試合で行われているところにはこれまで幾度か出くわしてきたけれど、長い行列に怖気付いて受検できずにきた。「今日は暇しているからチャンスですよ」と声をかけてもらって、「では是非に」とお願いした。
検査会場の受付で、学生時代一緒に韓国に遠征したFさんに久しぶりに再会した。12月に出産を控えているとかで、少しふっくらといい顔をしていた。会場では他にも懐かしい顔にいくつも出会った。岐阜にゆかりの知り合いは意外に多いことに気づく。


50mの伏射や10mエアピストルの決勝をちらりと覗いて、ひと通りあいさつしたら、早めに宿に向かった。
遠征先としては馴染みのない場所で、楽天トラベルを頼りに予約した料理旅館だったが、着いてみると古い建物を美しくリフォームした、素敵な宿だった。
まだ空は明るく、夕食まで時間があるというので、車で15分くらいのところにある入湯施設を紹介してもらって、出かけた。


どこを走っても川の景色が美しい。傾いた陽のもとあちらこちらにすでに秋の気配が漂っている。古くからの集落が、しっとりと落ち着いて今も息づいている様がいい。
試合でなくても、カメラくらいをぶら下げて、のんびりと来てみたいと思った。


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