ゲゲゲの娘、レレレの娘、らららの娘


ゲゲゲの娘、レレレの娘、らららの娘
漫画界の三大家、手塚治虫赤塚不二夫水木しげるの娘、手塚るみ子・赤塚りえ子・水木悦子の三氏による父を巡る鼎談。


個人的にはこの中で、水木しげる氏とは縁が薄かったのだけれど、つい先日、修学旅行の引率で偶然鳥取へ足を運ぶことになって、境港の記念館にも行き、一気に興味が増していたところだった。その出張から帰ってくると、偶然にも相方が図書館からこの本を借りてきていた。以前に書評で見かけて気になっていた1冊でもあり、ちょっと貸して、と持ちだして通勤の道中で一気に読んだ。


葛藤を秘めつつ、それぞれに父への愛が溢れていて、父たる3人の大家とともに、語る娘たちの心の軌跡が魅力的だった。


あらためて、「漫画」というジャンルがまだ「新しい」ものであることがわかる。私くらいの年代の者にとっては「不動の地位」を占めていると思っている作品群も、作家の手を離れた後で、どんなふうに世の中に位置づき、残っていくのかは、身内の愛情と献身によって、ようやく道筋がつきはじめたところなのだ。


手塚・赤塚で括られる共通点・水木・手塚で括られる共通点、みたいなものがあって、それぞれの存在が、他の独自性を際立たせ、明らかにしていく。
読者は齢を重ねることで、作品の中から読み取れるものや、作品に対する嗜好がどんどん変わっていく。この三大家は、三様に随分と異なる作品を紡ぎ出してきたが、そういった「変化」に応じられるだけの多様な引き出しを備えており、それ故の「大家」であることがよくわかる。あらためて、たくさんの作品を読みたくなった。


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