佐藤忠良さん


それ全体が大きな訃報であり、不安であり、悲しみでもあるような東日本大震災の記事の隙間で、佐藤忠良さんが亡くなられた、というニュースにぶつかった。
絵本「おおきなかぶ」の絵を描いた方、として幼いころに出会い、その後、日本を代表する彫刻家であることを知った。


ついこの間の学生の強化合宿で滋賀にいたときに、宿舎の出入り口で並べられているパンフレット類の中から、佐川美術館のものを手にする機会があって、常設されている佐藤忠良さんの展示に心が動いたところだったので、はっとした。


ごく普通の人の、さりげない立ち居振る舞いを切り取った彫像が佐藤さんの作品群の基調である。
訃報の中で、シベリアで抑留を受けたこと、死と隣り合わせの厳しい境遇で見た人間の姿が作品の形成に深く関わっていることを知った。
人の立派さは地位や財によらないこと、市井にこそ美しく強いひとがたくさん在ることを痛切に感じ、黙々と形にしてきたという。
頑なに勲章を辞退し、一彫刻家として生きたことを綴った、短い記事を読んで、作品を見に行きたいとあらためて思った。


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