耐寒登山

山頂より望む



昨年は前日の雨で中止になったが、今年は無事行われた。
学校からはるかに見える生駒山への登山である。


クラスはこの時期になっても今ひとつ落ち着かず、この日も数日越しの指導を受けることになっている生徒がいたり、何か行事ごとなどがあると不意に欠席する生徒がいたり、登校すれば何でもない様子なのに出席のできない生徒がいたりする。


体育科が中心になって、全校が大きく4グループに分けられ、3学年混合の7-8名のグループが構成される。
コースも、学校から山頂まで全行程を歩いてしまうものから、最寄の駅まで電車を利用するものまで、ルートの長短、ペースの早い遅いであれこれ工夫される。
各グループに1-3名の教員が配置され、一緒に上り下りするのだから、もう本当に学校挙げてのなかなかに大変な行事である。


一昨年は、最も元気な生徒たちを御しながら、ぐいぐい歩かなければならないAグループに付いたが、今年は対象の生徒が最も多い最大グループ「C」の1チーム、さらにはそのチームを含む後ろ三分の一を纏める役も任されることになった。
トランシーバーを持たされて、名表片手に少し緊張する。他のグループリーダー役はみんな体育の先生だから、その役割の重さが何となくわかるというものである。


このグループは、分けてあるとは言っても、どうしても含まれるメンバーが多彩で、お調子者でずんずん歩いてしまう子から、肉体的な疲労以上にめげてずるずる後退してしまう子まで、幅広くなることが多い。
私のグループは元気な1年生の男の子たちとおとなしい2年生の女の子、という編成だった。


賑やかに「立て板に水」という感じで話す口達者な子達の相手をしながら、うしろの静かな子達を見守る。
街中はなんとか列を保ったが、山道に入ると案の定あっという間に長く伸びてしまう。
私の主な仕事は、任された「うしろ三分の一」の生徒の先頭を押さえて、前のグループに混ざらないようにすることだな、とわかった。
最後尾を受け持つ先生と時々トランシーバーで連絡を取って、チームの子がどこに点在しているか把握しながら登った。


山道は片道たかだか10kmあまり、最もマイルドなコースを使っているのだけれど、なかなかどうして、ところどころには急峻な坂あり狭隘な道ありで、生徒によっては相当に過酷なものだった。足をひねってしまったり、元気者グループから脱落して私たちのところに吸収されたりする者が出たりしたが。それでも途中2箇所の休憩ポイントではきちんと集合を果たすことができて、ゴールとなる山上の遊園地には少し早めに全員が無事着くことができた。

1年生たちとは今回初めて一緒に時間を過ごした。
それこそ登山の間中、いろいろな話をしてくれて、彼らなりに学年の違う先生だから言えること、というのをあれこれ聞かせてくれた。
一人ひとり、自分たちをとりまく状況にあれこれ思うところがあって、うまく行ったりうまくいかなかったりすることに歯がゆさを感じつつ格好もつけつつがんばっているんだなあ、と感心させられた。

たっぷり一緒に体を動かしているから、素直にそんなことが話せるのだろうな、とも思った。

[fin]