文化祭

開店前



土曜日。今週はいい天気になった。


学習発表会的な午前の部と、職業科を中心にした店舗の営業を主とする午後の部、という編成になっている。
職業科のひとつを率いている私は、ラーメンとアメリカンドックを出す店舗の接客を担当する生徒たちを専ら授業の中で鍛え、ちょっとした不安と緊張を抱えながら今日を迎えた。
学年ごとに店舗の中の担当する部分が変わっていく仕組みにしてあって、今年担当している2年生は店舗の接客を中心に担う。ちなみに1年生はカウンター越しにアメリカンドックだけを売る店を担当し、3年生は厨房全般を取り仕切ることになっている。


去年は選考会に出させていただいて、本番を不在にしたので、現在の2年生の「当日発揮される実力」については話に聞くばかりで、直に見るのは今回がはじめてである。
模擬練習で、オーダーのミスはようやくなくなってきたが、実際の店舗となるといろいろなお客さんが、すごい数で押しかける。
本物のラーメンを、3杯までトレイに載せて運ぶのも当日がはじめてである。
生徒の動きに対する心配はもちろん、カウンターで注文を捌いて、運ぶ指示を出すことになる私は、オーダーの順番を尊重しながら、厨房と連携してラーメンとアメリカンドックの出来上がってくるタイミングのラグを調整し、残数を確認しながらちょうど売り切る、という芸当がうまくできるだろうか、と自分の役割についても相当に緊張する。


午前の発表会は例年通り早めに終わり、各自昼食を片付けると持ち場にスタンバイした。
開店10分前には、もう入り口は長蛇の列になった。予想していたことだが、開店後客が一回りするまでが、結構大変である。入り口の交通整理は生徒には荷が重く、はじめのシフトの間は私がそれを引き受けることにした。
生徒は、授業で見せないような真剣な面持ちで、自分の役割に一心に取り組んでいる。
長く待たされることになったお客さんは、保護者や卒業生、関係者がほとんどということもあって、好意的に接してくださり、ずいぶん助かった。懐かしい顔にたくさん会えたのが個人的にはとてもうれしかった。


わずか2時間の営業時間だったが、一度も行列が途切れることはなく、閉店20分前には200食あまりのラーメンを無事完売した。
大きな失敗もなく、本番に強いところを見せてもらった。
みなそれぞれに、授業だけではなかなか体験できない、いい勉強ができたと思う。
私もつつがなく自分の役割を果たせてほっとしている。


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