コンペイトウ・ミュージアム

コンペイトウ・プチ・ミュージアム



学級単位の校外学習行事があった。


学年ごとに行事の「目的」があらかじめ設定されているのだが、今年の学年には「社会見学」的な要素を盛り込むことが課されている。
なにか実習や見学ができるようなプログラムを、先生が手助けをしつつ生徒に探させた。


いざ探してみると、そういうことをサポートする検索サイトがちゃんとあって、行き先のエリアや体験したい内容に応じてプランを探せたりする。うまく使いさえすれば、子供にできることは随分と広がっている。


堺方面にいくことが決まったうちのクラスでは、生徒たちが検索サイトで、こんぺいとうを作る体験ができるプランを探してきた。お題の「社会見学」問題をクリアしてしまうと、予算の中でボウリングにいけるかどうかが、生徒たちの最大関心事になってしまったが、余暇を有意義に過ごす力をつけることも大きな目的のひとつだから、それはそれでいいのではないかと思う。ミュージアムの体験料とボウリング代と交通費で予算がいっぱいになったので、昼食は公園で弁当ということになった。他のクラスがみな外食を楽しみにプランを組んでいる中で、いかにもうちのクラスらしい選択である。


さて本日実際に行ってみると、小さな町工場、といった構造の建物がかわいらしくペイントされて、「ミュージアム」の看板が掲げられていた。
小さいけれどきれいな教室様の部屋に通されて、こんぺいとうについて、VTRをまず見せられた。


これがなかなか手が込んでいて、よくできたVTRだった。
南蛮人に扮した博士が講談口調で語る、一見子供向けに見える解説なのだが、内容が豊かで大人にも十分に面白い。
じっと座らされて、映像を見せられると、すぐにだれてしまうことの多い生徒たちが、20分近く静かに見入っていた。


宣教師や鉄砲の渡来と期を同じくしてやってきたのだろうとは思っていたが、信長への献上品として日本史に初めて名を刻んだこと。その後禁教を機に一旦完全に途絶えた後で、文献を元に2年も試行錯誤して製法を編み出した職人。作るのにかかる恐ろしい手間から超高級品だったこんぺいとうを工場で生産できるよう、機械の改良に明け暮れた明治時代の大阪の職人。
また、機械を使っている現在でも、こんぺいとうは1日に1mmしか成長させられないという事実。伝来した源のポルトガルでは、結晶を成長させるようにして作る製法は姿を消していて、こんぺいとうの形に似せた型に糖を流して固めるただの砂糖菓子しか残っていないこと。そして角ができるメカニズム・・・。
今回初めて知ったことだが、こんぺいとう、というのは、こうして学ぶだけの歴史や製法を秘めたお菓子である。


VTRの後は、工房の一角に案内されて、語り口のなかなかしっかりした年配の職人さんによる、丁寧な実演指導があった。
なにぶん、丸1日かかって、1mmしか成長させられないお菓子だから、すでにほとんど完成した白いこんぺいとうに、色と味を選んで蜜を作り、軽くコーティングする程度の作業である。
それでも、自分たちで色や味を選んだ蜜を、斜めに回転する窯にゆっくりかける作業は、適度に緊張感があってわかりやすく、生徒たちは面白かったようだ。


できたこんぺいとうを包装してもらっている間、先ほどの部屋で、カルメラ焼きの実演をしてもらったり、さまざまな変わりこんぺいとうを試食させてもらったりした。
随分盛りだくさんで楽しい体験学習だった。段取りがよく考えられているし、食べられて持って帰るものもあって、子どもたちの満足感も大きい。
期待以上の内容に引率した私たちも満足して、ミュージアムを後にした。


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