冷蔵庫の棚

冷蔵庫の棚



明日と明後日は、長瀞まで出かけて、合宿のコーチを手伝うことになっている。
夏休みもいろいろあって、なかなか普通に家で過ごす日はない。
「この夏休みにしておかねば」と思っている家のことは、機会を逃さずにやっておかないと、あっという間に過ぎてしまいそうだ。
今日は「夏の工作」に取り掛かることにした。


今回作ったのは、冷蔵庫を覆う棚である。


冷蔵庫の上に物を置いたり、壁にマグネットであれこれ貼り付けたり、というのは、上面や側面から放熱して冷やす仕組みになっている機械にとって、本当は禁忌なことである。
それでも、「置いたり貼ったりせざるをえないもの」がたくさん出てきて、前の冷蔵庫の周囲は、やむなく雑然としていた。
今回、新しくしたのを機に、これで当分冷蔵庫が変わる事はないということもあって、冷蔵庫の周囲に放熱スペースを確保しつつ、ものを置いたり、メモやスケジュールが貼れるようにする棚を、きちんと作ることにした。


構造的には、柱を天井に突っ張らせて棚でつなぎ、側面にはパンチングメタルを配する。フックもマグネットも使えて、放熱も抜群、というのを漠然と構想した。
問題はパンチングメタルである。
どうも、「素材」として売っているものが店頭には見当たらず、ネットなどで当たってみると、金属加工業者にオーダーする本格的なものになってしまう。
そこで、製品になっているものから「部品取り」できないか、と考えた。


初めは、簡易なパーティションのようなものを探したけれど、粗いネットのようなものか、オリジナルカットを施した著しく高級なものか、のいずれかしかない。
同時に検索でたくさん引っかかってきたものに、パンチングメタルを棚板に使ったワゴンがあった。
これは結構安い。
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幅さえ合えば、1つ買うだけで同じサイズの板が複数手に入り、ネジで木製の構造へうまく取り付けることもできる。


表示される寸法をもとにあれこれ思案して、この間注文しておいたのが届いた。
早速開梱すると、思ったとおりの色とサイズで、ほっとした。


昨晩、この棚板の寸法をもとに設計図を作った。
左の側面はワゴンから取った金属の支柱を6本渡してパンチングメタルを留めるけれど、右の側面は壁に隠れる。4本の柱それぞれに施す加工が異なる上、もともとコーナーいっぱいを占めている冷蔵庫をさらに取り囲むようにして作るわけだから、なかなか難しい。
どうやったら組み立てられるだろうか、とかなり頭を悩ませた。
深夜までかかって、おおよその手順が頭に描けたところで、昨晩はばったり眠る。


今朝は、朝ごはんを食べて洗い物と洗濯干しを片付けると、娘とお使いを買って出た。
切手を買いにコンビニに行って、その足で明日の長瀞行きの切符を買いに駅のみどりの窓口へ。無事に切符を買ったら、そのまま線路を越えて郵便局まで、エクスパックを買いに行く。
駅ではパンダの人形とにらめっこし、発券の機械を真剣に見つめ、パンフレットを1部もらって握り締めて歩き、郵便局では窓口のおねえさんに愛想を振りまく。ちょっとした大散歩になった。


余勢を駆って、娘と二人でホームセンターに材木を買いにいくことにする。
少しチャレンジだな、と思ったけれど、珍しく「ママがいいー」と言わず、パパと一緒に行く、と言う。
「向こうで木を買ってる間は危ないからカートに乗って待てる?」と聞くと、「うん」というので、「よし」ということになった。


野菜室で使う、カラフルなソフトバケツを先に買って、ネジなどの小物をかごに入れて娘に任せておくと、カートの上で彼女なりに、ああでもないこうでもないと、仕分けしてくれる。
カットサービスののこぎりの音は、少し怖かったようだが、カートの椅子でお絵かきできるように、紙と鉛筆を渡してやると、「これはハンバーグ」、「これはママ」とぐるぐるいろいろ描きながら待ってくれた。


これまで数々作ってきた、棚板が何枚もあるものと違って、寸法こそ少しややこしいものの、驚くほどに買わなければならない材料は少なかった。


賢く待ってくれたご褒美に、コンビニに立ち寄って「いつもの」パックのジュースを選ぶ。
「パパは、にがにが」と、コーヒーを選ぶと、「ゆっこはりんごね」と、りんごミックスを指差した。
うれしそうに2つを抱えて帰宅する。


昼食後、相方と娘が昼寝に入ったのを見計らって、作業開始。


囲むものが冷蔵庫で、周囲のスペースも限られることから、あまりごつい材を使うわけにも行かず、華奢な2×2と1×4を柱にしている。
しかし、材は華奢になるほど整った材料が少なく、どうしても狂いを許容せざるを得ない。
「その辺をどう誤魔化したものか」、頭を悩ませながら材を罫書き、穴を開けていく。


ある程度、面になる構造を作っておいて運び込み、冷蔵庫を大きくずらしては、えいやっ、とコースレッドでつないでいく。
柱にはしっかり下穴を開けて、設計図どおりに接合できるよう最善を尽くしたが、ダイレクトに電動ドリルで固定していく作業は、かなり難しい。
壁との間に入る、見えない部分の梁は、手も届きにくくて、取り付けるのが特に難しく、少し回転して斜めになってしまったりもした。見える部分は意地で正しい穴にねじ込んで、なんとか体裁を保つ。
パンチングパネルの支柱は六角のボルトを挿して固定するのだが、そのために開けた穴は寸法がぎりぎりすぎて回すのに力が要り、固定に手間取った。


穴を開けなおしたり、木槌で叩き込んだり、といろいろあったが、それでも作業は思ったよりも早く進み、娘が晩御飯を食べ終わるころにはあらかた組み上がった。


今日は、材料を調えるところで終わりかな、と思っていたので、1日で材料購入から完成まで漕ぎ着ける手際に、自分でも驚いてしまう。
娘がお風呂を終えてさあ寝る準備、というタイミングには、音の出る作業を全て終了させることができた。


寝静まった頃合に片づけをすませ、出来上がった棚を見上げる。


作業に時間がかけられるなら、本当は、オイルステインで色をつけたかったなあ、と思う。
リビングダイニングと台所の境目にある今回の棚は、ダイニング側から見れば、その延長である。
無垢のままで、ちょっと実用一点張りな感じは残念だ。
でも、トータルとしてはよくできた。


早速、弁当箱や保冷材・乾燥剤などを片付けた籠やアイスボックスなどを棚の上に置く。冷蔵庫の上はかなりの面積で、すっきりと物が片付く。
いくらモノを置いても、マグネットで貼り付けても、冷蔵庫から距離が保たれ、通気性もばっちり確保できている、という点に満足する。


冷蔵庫を修理したり、運び出したりするときは、取り外しがちょっと大変かもしれないけれど、それはきっとずっと先のことのはずである。


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