高架工事が半分終わる

新しいホーム



通勤に使っている路線が、上りと下りを分ける格好で、ここ数年ずっと工事を続けている。


駅周辺の再開発も同時に行われ、今の職場に転勤してきたときの、ごちゃごちゃと自転車であふれかえる中、それをすり抜けながら、すっかり寂れてしまった昔ながらの商店街のアーケードに滑り込む、といった景色は一掃された。今ではそれが、広々としたロータリーと高層住宅つきの商業施設に置き換わっている。


高架化工事はなかなか時間のかかる事業で、今では真新しくなった駅前の景色の中、延々と線路の工事だけが続く格好になっている。


「下り」側の工事が完成して、今朝から新しい高架の上のプラットフォームに切り替わった。
通勤に使っている「上り」は、いつもと同じ線路、同じホームのままなので、朝にはそれに気がつかなかった。


帰り道、すっかり仕事で遅くなって、へろへろで駅にたどり着いたら、上の新しい駅に電気が点いていた。
何の気なしに駅舎に入ると、改札の向こう側にあった仮設の壁が取り払われ、真新しい階段やエスカレーターが見渡せるようになっており、旧駅に上がる数段の階段口は閉鎖されている。


そうか、今日からだった。


真新しい階段を上がると、これまでの、天井の低い、壁に沿ってずっとベンチが作りつけられたやや昭和レトロなホームとは打って変わって、見上げるような高い屋根と、効果的にガラスを使って見通しの良い、美しい駅が現われた。
作りのきれいさはもちろん、列車の表示パネルが新しくついて、時刻表を睨まなくてよくなったことや、上り側にはやたらあるのに、なぜか下りには全くなかった飲料自販機が置かれことが、うれしい。


上り側は、まだ従来の地上の駅を使っているため、向かい側のホームは、ない。
遊園地のアトラクションのように、高いところに一方の線路とホームだけがあるので、町並みや山々を広々と見渡すことができる。
これからしばらくの間、期間限定のこのちょっとぜいたくな眺めを、仕事帰りの疲れた目に、映すことができる。


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