パスポート

いっちょまえ



今月が期限だということは覚えていて、切れる前に手続きした方がいいとは思っていたのだけれど、期限を改めて確かめるとすでに7日で切れていた。
海外へ出る確たる予定が今すぐにあるわけではないのだけれど、授業がしばらくない春休みの時期でないと、手続きのために平日に職場を抜け出すのが困難なので、急いでやってしまったほうがいいのではないか、ということになった。


相方が、昨日パスポートセンターに行ってくれた。
銃器の一斉検査があるため、すでに来月の6日は前半に休みを取ることになっている。
そこに受け取りが間に合わないか、と確かめたところ、翌日に申請すれば間に合うことがわかり、昨日のうちに証明用の写真を撮ることにした。
何だか変だけれど、帰りがけに職場でひげを剃って、自宅近くの自動撮影機で撮った。


パスポートセンターでは、証明写真の像の寸法について細かく注意があったようで、「機械で大丈夫か」と少し心配されたのだけれど、いざ撮ろうとすると、自動写真機の性能は大したものになっていた。
中心線や高さの合わせ方が正確になっているばかりか、プリクラ同様デジタルで撮れるようになっており、プリントアウト前の画像で細かい確認や、拡大縮小の修正ができるようになっている。
パスポートの規格で定められた寸法どおりに画面に補助線まで出て、ほとんど間違いようがない。表情が気に入らなければ、取り直しも数回ならできる。
「ちゃんと写真屋さんで撮ってもらった方がいいですよ」というパスポートセンターの心配は、幸いにして杞憂に終わった。


パスポートセンターへは、娘も一緒に行くことになったのだが、聞くとずいぶんと珍道中だったようだ。
家を出る時刻が、ちょっと昼食には早いかな、というくらいの頃合だったので、
「お昼ごはんはどうする?」と娘に尋ねると、
「お店で食べる」とのこと。


ほとんど外食はしたことがないのだが、車窓から見える、煌々と窓の光った飲食店への関心が普段から並大抵でなく、
「今度行こうねー」、「ここいきたいわー」
などとよく言っているらしい。


手続きが終わって、「どこで食べようかな」とショッピングモールの1階にある、お店の案内板で店を決めようとしたらしいのだが、お店自体も1階にあると思った娘は、実際に店が並んでいる3階へ上るのを嫌がって、事情を説明するのが大変だったらしい。

3階に上がってからは、あらためて店を見てまわって、娘でも大丈夫そうなメニューのある店の見当をつけていると、「ここか」とばかりにさっと勝手に入っていって、空いている席に座り、すましている。
相方があわててついて入り、サンドイッチのセットと1品を、二人で食べるつもりで注文したらしいのだが、品が届くと「これはわたしの、それがママの」と、自分ひとりで一皿食べようとする。
「ちょうだい」と言いながら、横から一緒に食べて、なんとか適量ですんだけれど、と相方は呆れ顔だった。


周囲からいろんなものを吸収して「できるもん」と思う「いっちょまえ度」はますますたいしたもので、その張り切りぶりが本当にかわいらしくておもしろい。


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