スポーツ教養入門


高峰修編著「スポーツ教養入門」を読んだ。


スポーツ教養入門 (岩波ジュニア新書)
新聞の岩波書店の広告に出た書名を見かけたときから、岩波ジュニア新書でこのタイトルなら、必読だな、と気になっていた。
いずれ注文しよう、と思っていた矢先に、先日の関西学連の強化合宿で支部長Hさんとお会いしたときに、「この本知ってるか」と見せられた。
知ってます、読もうと思っていたところです、と答えると、えらく喜んでくださって、あげるから先に読みなさい、と半分くらいまで線を引きながら読みかけたその本を下さった。


スポーツに関係する者の不祥事は、取り上げられる機会が増える傾向にある。
以前から問題であったが見過ごされていたものが表に取り上げられるようになった、という側面が強くある一方、そんなことをしてしまうのか、と顎の外れそうな感じになる、以前なら考えられなかったタイプの問題が出てきているのも確かだ。


大学を卒業して15年も経つと、自分たちが「常識」と思っていることが「学生たち」と共有されていない、と痛感して、言葉を失いそうになるときがたまにある。
自分が無条件に「あたりまえ」と感じていることを、その必要性から説く、ということは難しいものである。
その難しさは昔からきっとあって、私たちが「学生」だったときも同じように、その指導者たる人たちに、同じような苛立ちを数々感じさせたであろうことは想像できる。
なんというか「問答無用」といった形で、言うことをきかせるようなことになっていた「動機」は、私たちが今感じているものと大して変わらないものだったに違いない。


この解決には、「何を共有しなければ成り立っていかないのか」ということを、伝えられる形で私たちが持っておくこと、これしかない。
「何となくある教養」ではなく、「しっかり整理して噛みくだかれた教養」であれば、これはきっと役に立つはずだ。


書名とシリーズ元を見ただけで、「必読」と思った背景はこんなところである。


果たして、期待を裏切らない内容であった。
全貌を明らかにする章立てと、各章できちんと示される引用文献と参考文献のリストだけで、十分に値打ちがある。


第 1章:スポーツマンシップとは?
第 2章:オリンピックの意義ってなんだろう
   (コラム) スポーツと権利
第 3章:スポーツビジネスには夢があふれている
第 4章:パラリンピックの世界
   (コラム) 多様化するスポーツ
第 5章:メンタルトレーニングの意味
第 6章:ケガと向き合う
   (コラム) スポーツと健康
第 7章:将来どんな人生を歩むのか
第 8章:スポーツ指導者になるということ
   (コラム) スポーツとジェンダー
第 9章:ドーピング問題
第10章:スポーツの現場で起きているハラスメント


明治大学の連続講座が元になっているようであるが、それぞれの内容にふさわしい執筆者が、意欲的な語り口で各章をまとめていてよかった。
選手たちに一読を求めたいのはもちろん、スポーツの指導にあたる人々にも薦めることのできる一冊である。


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