アイーダ


隔週刊で発刊されるオペラコレクションという、DVDのついた雑誌シリーズを思わず注文してしまって2月あまりになる。
ここまで5回分が届いた。


カルメン」・「椿姫」・「魔笛」・「蝶々夫人」・「アイーダ」となかなか魅力的なラインナップだ。しかも、これまでに映像ソフトとしてある程度元が取れたと思われる、人気の名演から採られていて、いい買い物だったなと思わされる。
観る時間がないことは覚悟していたが、行き帰りの電車内でPCを広げてみる他には、なかなかまとまって映像を眺める暇がない。
この度、思いがけず時間ができたので「アイーダ」を観てみた。


高校のとき、選択授業で音楽を取っていたのだが、そこで鑑賞の時間があり、オペラをダイジェストで観たことがあった。
意欲的な先生で、音楽室は、当時まだ珍しかったレーザーディスクのソフトを見られるようになっていた。
この「アイーダ」は、その時に観たものと同じではないかと思う。
1981年の映像で、まだ40台になったばかりの若々しいパバロッティが、目を見張るばかりの、力強くキレのある声で歌っている。


主役のアイーダを演じるマーガレット・プライス、その恋敵アムネリスを演じたステファニア・トツィスカの女声も見事であったが、アイーダの父にしてエジプト軍の敵、エチオピア王アモナズロに扮したサイモン・エステスの歌唱が圧巻だった。
パバロッティ扮するラダメスの歌唱は、恋愛がらみのものがどうしても多くなるのに対して、エステスは、国を背負った悲壮感を歌う場面が多いために、非常に強い印象を残す。


オペラという形式はそれ自体が豪華で、仰々しくすらあるが、これはその極みを目指したような演目である。舞台装置も大掛かりなら、その舞台に上がる人数も大変なもので、壮麗さと迫力は、素直にオペラってすごい、と思わせるものである。
いまや、サッカー日本代表の応援ですっかり定着した感のある凱旋行進曲など、印象的なメロディもたくさん抱えており、他の様々なエンターテイメントと並列されても全く見劣りしない力強さは、オペラの「入門」として観せるには、うってつけだろうと思う。


へえー、と高校時代に授業で観た記憶と重ね合わせながら、20年を経て全貌を知る楽しみを味わった。


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