合格お祝い


学校というところは一般的に、全員が担任をしているわけではなく、役職の関係や職種・経験、あるいは定期的なローテーションによって、担任をしていない教員が一定数存在する。


一般校からすれば「対生徒比」が大きいものの、支援学校としては異例に教員一人当たりの生徒が多い上に、「問題」が介助に始まって特別支援・問題行動対処まで、「学校における生徒支援」バリエーションの「デパート」状態で、しかもその対処は、もっとも手厚い「支援学校基準」を満たさなければならない、というのが私の職場の実態だ。
そこで、1クラス2名の「担任」を一般的に設定する他に、担任から外れている全ての教員を全クラスに配分して、これらの先生方に優先的にサポートに入るべきクラスを割り振っている。
これらの先生の、割り振られたクラスへの関わり方は、その先生方次第で様々だが、「クラス付き」と呼んで、準担任のような扱いになっており、学級・学年単位の「困難」に対処する上で有効に機能している。


私のクラスに充てられた「クラス付き」は、本校に今年初めて来た講師の先生なのだが、まめに生徒に関わってくれるだけでなく、担任業務をいろいろさりげなく請け負ってくれてとても助かっている。


その先生が、この度、教員採用試験に合格した、というので、お祝いがてら、同じクラスを担当する3人で帰りに食べに行った。
必要に迫られる特殊な場合を除けば、帰りにぷらっと飲食店に寄るのは、この職場になって初めてである。


独身だった1年目は、学校自体も1年目で、底なしに忙しく、とことん遅くなって、仕方なく終電を気にしながら駅でばたばた食べて、帰ってすぐ寝る、ということを幾度もやったが、そのときのことを思えば、まあ少しは落ち着いてきた。
落ち着いてきたけれど、今度は父親になったものだから、可能ならば一刻も早く帰りたい、帰らないといけない、ということになって(でもちっとも早く帰れていないのだけれど)、そういう機会はないままだった。


今日は平日ながら、相方が幼馴染の結婚式に出席するために、娘を実家に預けて出かけている。
偶々、そういうことが重なって実現した、というところである。


いろいろよく話し合っている3人ではあるが、職員室から居酒屋に環境が変われば、これまでに話さなかった話題がいろいろ出てきて、面白かった。
講師ながら名門私立で数年勤めた後でそれを辞めて、長く海外に留学し、そちらでも教員資格を取って、実習生という立場ながらも英語で授業をしていた、という人であるから、何と言うか、今年こちらで改めて「やはり教員をやろう」ということになるまでに、数年以上にわたって「腑に落ち着けたかったこと」があったのかな、とかその辺が気になっていたのだけれど、そういう話にはあまりならず、3人の中では一人だけ突出してこの業界のキャリアが長いばっかりに、わかりにくくて、しかし背景にはそれなりに知っている者にだけ明瞭な、意味や意義や経緯があったりするという、業界特有の様々なことを、知っている範囲で説明させられる役回りになってしまい、何だかある意味で私も歳を取ったんだなと思わされる、楽しいひとときであった。


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