ポスターとパンフレット


いわゆる受け持ちの授業や学級を担任することに伴う一連の業務を「基本業務」とするならば、これに付け加えて、その他に追加というか応用と言うか、分掌や委員会ほか、個人的な特技や、表立った役職としては現れない組織の中のポジション故に引き受ける様々な仕事がある。


「基本業務」が重要なのは言うまでもないが、実態はそれ以外の仕事のボリュームが大変なもので、それを必死にこなす合間に「基本業務」をこなす、みたいになることが常である。
ここらへんは人によって大きな差があって、基本業務以外が忙しいかどうかは、年齢に関わらず、人によってぱかっと分かれてくる。
私は結構、何と言うか、そういう仕事が常に結構多いように思う。バタバタ感がずっと抜けないのは、たぶんそのせいだ。


重なって身動きがとれなくならないように、季節ごとにこれらが散らばるように工夫してきたのだが、そのひとつが今年になって突然、例年よりも3ヶ月も早い締め切りに変更になったため、今、ちょっと大変なことになっている。
授業が止まる秋休みと冬休みをうまくつかってこなしていたものが、今年は秋に一遍に片付けなければならない。それなりに覚悟して段取りしていたつもりだったが、あっという間に秋休みも2日が過ぎ、期日から逆算した見通しが真っ暗になってしまった。


やむなく個人情報にかかわりのない仕事はどんどん持ち帰る。
イラストレーターやフォトショップを使うような仕事は、開校以来、一手に引き受ける格好になっている。
今日は、生徒が美術の授業で描いてくれた全イラストをコラージュしてつくる、文化祭のポスターとパンフレットデザインをせっせと片付けた。


フォトショップでスキャンと画質調整をして、それらをイラストレイターで配置するのだが、昨年まで、どのくらいの画質が必要か、という見当が甘くて、コラージュで背景を作る作業では、中盤を過ぎるととんでもなく重々しいファイルになってしまっていた。
今年は、使用するサイズが小さいものは思い切って50dpiまで落として処理したら、ものすごく軽快にコラージュ作業が行えて、しかも画質的にも問題なくできた。


毎年、「ポスターを描く」というシンプルなテーマで描かせた作品全部をコラージュしていると、学年ごとの作品の傾向が一目でわかる。
昨年は、重々しい色の黒っぽい作品がたくさん混じっていて、マスクをきつめにかけても、主張の強い背景になってしまって苦労した。
今年はそういうのが少なくて、なんだか作品が全体に華やかで明るい。文字にも凝ったレタリングを施したものがいくつもあって、タイトル用の文字を選ぶのも楽しかった。
デザインの基本は変えていないが、例年ならできるだけいろいろな色がにぎやかに出るように苦心するところを、今年は逆にトーンをそろえて、すっきりと明るい感じにすることを心がけることになった。同じことをやっていても、素材が変わると変わるものだな、と感じる。


作業自体は面白いし、年々わずかなりに習熟していく手応えが嬉しくもあるので、引き受けることには異存は全くないのだけれど、「仕事」として他の業務と並行して職場でやるには、こんなことやっていいのかという心穏やかならぬ感じにイライラしながら、結構な時間を食ってしまう。


散髪にいけなくなってしまったのは残念だけれど、休みの日向きの仕事かな、と完成品を前に自分を納得させる。
しかし、締め切りが早くなった、職場でしかできないもうひとつの大仕事が気になってきて、納得したのも束の間、なんだか気分は重い。


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