須磨海浜水族園

イルカショー



クラスごとに、行き先を決めて出かける校外学習行事があった。
初めての彼らは、行き先を提案する力も、その内容を進んで考える力もまだまだで、候補をいくつかリストにして提案したり、調べ方を提示したりと助け舟をいろいろ出すことになった。


この春に開通した、大阪なんば線の恩恵は大したもので、神戸方面へ行くのに、価格面でも大幅に敷居が下がったため、候補に挙げられるようになった。
使える金額が限られているので、行った先で障がい者の割引がどの程度効くか、ということと交通費が、プランの鍵を握っている。


落ち着きのない彼らには、行った先での時間がたっぷりあるよりも、移動そのものを楽しんで、ちょっと時間に追われるくらいがいいのではないか、と担任するこちら側は密かに思っていたのだが、果たして、彼らはその通り、最も遠い行き先を候補リストの中から選び出した。


須磨海浜公園は、幼い頃に一度だけ行った記憶がある。
祖父の車で舞子に出かけた帰り、通りがかりに家族だけ降ろしてもらったような記憶がある。
電気を発していることを示す装置のついた、電気ウナギの水槽だけおぼろげに覚えている。
以前の記憶がそんななので、実質的には初めてである。


「ライブ」と称した、餌やりを中心に、魚や動物たちの生態を観ることのできるショーがプログラムされていて、それを追うだけで楽しめるようになっている。
入り口入ってすぐの大水槽は、高い天井と薄暗い空間がなかなか素敵だし、地下に設けられたアマゾン館など、散在する施設もなかなか魅力的だった。
海が間近く、外にベンチや広場がたくさんあって、公園のようなつくりである。幼稚園の遠足とおぼしき団体が複数来ていたが、広場で弁当をわいわい食べているのがしっくり来る感じは、これでなかなかいい。


行事自体は、狙い通りの慌しいスケジュールで、あっという間に水族園での時間は過ぎた。
自力では来たことのない遠距離の移動に、手応えを感じたようだったし、ひとまず成功といえそうである。


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