卒業式


昨夕からの雨に、どうなることかと心配したが、起きてみるといい天気でほっとした。
やはり、門出の日は雨でない方がいい。


開校準備から含めると4年。
ごく近いところから、1期生たちを3年間見つめてきた。


あらゆる試行錯誤や苦楽は全て彼らのためにあり、私の中では、この1期生たちがこの学校そのものだった。


不登校気味で最後まで出席が軌道に乗らなかった生徒から、今日の式典だけ出るというわけにはいかない、と朝に電話で欠席を伝えてきた。証書や荷物を取りに午後に来る、と言う。
残念な思いも抱えつつ式に臨む。


フォーマルで儀式的な第1部。
生徒たち担任たちがマイクをまわしてスライドを前にひと言コメントをし、全員で合唱をした第2部。
スライドの途中でもう涙に暮れている生徒がいる。歌の半ばで、私も図らず涙があふれた。
桜色の紙吹雪をくぐって、式は終わった。


最後の終礼では、生徒一人ひとりが、前でひと言話す。
私のクラスの生徒たちは、感極まりつつも、涙なくにこやかで、そのまま穏やかに終わるかに見えたが、私がだめだった。
最後に話すうち、涙が堪えられなくなって、目頭を押さえて変な声になりながら何とか語り終える。
初めて担任をした、若い相担も涙でぼろぼろになりながら、私に続いて最後の話をした。


下級生と先生たちが、建物から正門まで花道を作る中、卒業生たちを見送った。


唯一出席できなかった生徒が、思いのほか早く、まだ式典会場の片づけが始まらないうちに母親とやって来た。
校長の粋な計らいで、会場で証書を渡そう、ということになる。
3年生の担任の先生が、ふたたび会場に集まってくれた。
証書の受け取り方だけ急遽指導してもらって、席に着かせた。
壇上に校長、呼名の位置に私が立って名前を読み上げる。
担任していた2年間の、さまざまな場面が記憶に甦る。
生徒一人、保護者一人の卒業式も、また涙のこみ上げるものだった。


今日は泣いてばっかりだ。
すべての卒業生を送り出して、職員室でぼんやりと虚脱する。


数年越しのひと仕事を終えて、今日の午後は抜け殻のようにすごした。


[fin]