母校の合宿


「コーチ」となっている母校の合宿に参加した。
ここの「コーチ」という肩書きを理由にして、学生連盟やらいろいろの協会の仕事に追われているのに、肝心のこのチームは一番足が遠のいて、なかなか見ることが少なくなってしまった。
夏春の合宿は、メニューこそ作って相談に乗り続けているものの、実際に参加して指導するのは久しぶりである。


夜の講義で、わたしからこの内容の話を聴いたことのある人は?と尋ねたら、手を挙げたのは、連盟の強化合宿に参加したことのある人だけだった。
3年は見ていなかったということだ。


普段連絡の窓口になっている数名を除くと、誰が誰だかよくわからず、同じ日程で合宿している関西大学の方が知っている部員が多いような有様で、ARマスターやSBマスターに付き合ってもらって射座の後ろを歩いて回り、一人ひとり、名前と回生・射撃への取り組み具合などを聞かせてもらった。


部員の多くは、何か「技術」について系統立った話を聴く、ということ自体が、実際に講義を受けるまではよくイメージできなかったようで、(90分程度の予定だったのだが)夜のスケジュールにそんな時間が設けられていることに、身構えるような空気さえあった。


1度きりの90分程度で伝えられることは限られていて、定番の「撃発と撃発の間のプロセス」を中心にさらっと話したのだけれど、新鮮に受け止められたようだった。
練習があった日の夕食後・風呂上り、という眠い時間帯に、集中した良い空気が終始張り詰めたまま、消灯時間まで話をすることができた。


宿泊した「少年自然の家」は、宿泊者がわがチームだけで、広大な畳の部屋がたくさん空いていた。
管理人に尋ねると、消灯後もそれらを静かに使う分にはかまわない、と言ってくださったので、有志はフォームやセッティングを見ますよ、と声をかけてもらった。
物好きが来るかな、くらいに思っていたら、装備を抱えてぞろぞろと10人以上がやってきて、深夜の大講習会になってしまった。12時過ぎまで伏射を中心にフォームの作り方やセッティングに取り組んだ。
素直に熱心に取り組む姿に、射撃をきちんと楽しめるところまで、早く上手くなってほしいと、心から思った。


センスや技術的なことよりも、成績に対する自己評価が低くて、そのために練習量も伸びない、ということの方に抜きがたい壁がある。
そこは、たまにこうやって指導するだけでは駄目で、継続的に関わりを持って乗せたり励ましたりすることが不可欠なのだけれど、そこはなかなか今の私一人では手が回らない。
そのことをわかっていて放置しているのは罪が重いのだけれど、今できることだけでも精一杯やって、少しだけそれを滅ぼすことにする。


[fin]