勝負脳の鍛え方


<勝負脳>の鍛え方 (講談社現代新書)
昨日、石巻から大阪に向かう機内で「勝負脳の鍛え方」を読んだ。


学生連盟の支部長さんがいたくこの本を気に入って、林さんを招いて選手や指導者向けの講演会を企画された。
では一読しておかねば、と手にした次第だ。


「勝負脳」というネーミングは、個人的にはなんだかあまり好きでない。
でも、耳目を集めさせるには効果的なネーミングなのだろう。
このネーミングに通ずる、ちょっとひっかかる記述や表現に時々出くわしたけれど、おおむね気持ちよく一気に読めた。


ドーパミン系の支配、という観点に立つと、記憶・情・思考が器官的にも機能的にも連関が深い、ということを取っ掛かりに、思考法発想法の見直しをすすめた論考だといえる。
そこから導き出される結論は、大きな驚きを伴うものではないが、包括的な説明が新しく付けられて、これまで断片的で独立した知識だったものを体系づけてもらった部分は幾つかあって面白く読めた。
新しく整理されたことで、いくつかの取り組みの手順が今後変わってくる可能性はあるな、と思う。


興味深かったのは、「脳」の疲労に関するくだりであった。
仕事をしながら競技でも勝負する上で、傍目には時間的な両立の難しさはよく言われるが、いつも実際に悩まされているのはこれだ、という自覚があったので、ああ、ちゃんとただ「疲れ」とか「ストレス」とかいうことばでなく指摘してもらえている、とうれしかった。
その回復には、楽しい会話と明るい気分が理論的に有効だという。
脳を疲れさせる駆け引きがスポーツの勝負を左右している、という見方と併せて、なるほどと新鮮だった。


脳外科の手術においては、失敗の許されなさと、求められるスキルの精妙さと、未知の状況に対する臨機応変の必要度が、スポーツ以上のものがある。
そこへ対応する人材を、供給し続けなければならない中で生み出されるノウハウには、まだまだ学ぶものがたくさんありそうだと思わされた。


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