扉をつける

扉のついた棚



勝手口に作りつけた棚は、すでに生協の通い箱や野菜を入れた箱が置かれて、しっかり活躍している。色もつくりも悪くないのだけど、置いたものが丸見えなのは、やはり冴えない。
予定通りに扉を付けることにする。


相方が髪を切りたい、というので、私が娘を引き受けて、ホームセンターへ、父娘でははじめて車で外出する。
母親抜きで大丈夫かな、と少し心配したが、上機嫌で一緒に車に乗り込み、走り出すとあっという間に寝てしまった。
着いてからも、起こすのが忍びず、スリングで吊ってカートを押したが、ちらと薄目を開けると、「あ!ここは、前にも来たおもしろいところだ!」とばかりに興味深々の様子で目を覚ました。
カートのベビーシートに座って、くるくる周りを見回してご機嫌である。


さて、4段のうち2段は蝶番で板を取り付ける扉を、照明の関係で蝶番が使えない1段と、上に棚板がなくて蝶番を取り付けられない最上段は取り外すタイプの扉をつけよう、と棚が出来た時からあれこれ考えてきた。
下から上に跳ね上げる扉をイメージして、金具などの部品類から買っていく。幅が60cmともなると、肝心の「板」はなかなか高い。
どうしたものかな、とうろうろ見ているうちに、製品になっている「すのこ」の方が、面積比でずっと安くなることがわかった。細くて多少難のある材でも製品になるからだろうか。
上手く合うのはどのサイズか、メジャーを当てて切り出す箇所を想像しながら物色する。
幅30cmで長さ150cmという、下足箱の前などで使うによさそうなすのこが、二本横に組み合わせると、扉にするのにぴったりとわかった。
切ったり繋いだりするわけだが、そのためにすのこに使われているのと同じ寸法の角材も合わせて購入する。


買い物の間中、娘はいろんなものに手を伸ばしたり、周囲の客に愛想を振りまいたりして、終始ご機嫌だった。
さほど大した距離ではないのだけれど、帰りも走り出すとまた、あっという間に寝てしまった。


帰ると早速作業に取り掛かった。


まずは、すのこをそれぞれ扉の寸法にあわせて4つに切り分ける。
2つの断片を一文字の金具でつないで1枚のすのこに仕立て、縁に同じ太さの角材を当てて釘で打てば扉は出来上がり。
棚にあわせてあつらえたようなすのこ板が出来上がって、ちょっと感動する。


実際に出来上がった扉を棚にあてがってみると、上に跳ね上げるタイプは、蝶番を固定するネジに掛かる負荷がどうも大きい。
単純に横に開く扉にしても周りに支障がないことがわかって、方針を変更することにした。
わかってしまえば簡単な話だが、こうすると、上に棚板がない最上段にも蝶番を使った扉をつけられてしまう。
折角買った、上に持ち上げて開いた状態に扉を固定する金具は出番がなくなってしまうけれど、これはまた使う機会があるだろう。


この計画変更を受けて、蝶番を受ける縦の部材を急遽切り出して、すのこ板に取り付ける。
今日は久しぶりによく鋸を使う。パイン材はやわらかで、思い通りの寸法にきれいに切れるので気持ちがいい。
そういえば、このごろは固定のほとんどを、コースレッドと電動ドライバでしているから、金づちで釘を打つのもすごく久しぶりだった。
高校時代に文化祭で大きな展示物をつくった時の感触を思い出す。


蝶番を使う工作は実は今回が初めてで、上手くできるかどうか少し不安だったのだが、慎重に位置を決めてネジを止めると、うまく固定され、スムーズに動く扉になった。
照明の前の「はめ込み式」の扉は、ちょっと思いつきだったのだが、幸いこれもうまくできた。
扉の上部に一本「丸ラミン棒」を5cmほど飛び出させて、棚の柱の方にそれを受ける少し大きめの穴をあける。
扉は底に角材が来るようになっていて、半自立するのだが、さらにこの棒が上部で柱に少し刺さるだけで、決して上から倒れて落ちてくることがない、という仕組みだ。
左右に取り付けた取っ手で扉を持って手前に引っ張ると、扉がすっと抜ける、という具合だ。
反対に、閉めるときは柱に沿って下から上へ扉を滑らせると、棒が穴に引っかかり、その状態で扉板を棚に、えい、と押し込むときゅっと止まる。


最上段の扉は、節とぶつかって蝶番を固定するネジが折れてしまったり、柱材の曲がりから、まっすぐ扉が回転しなかったりで、ちょっと閉じ際が渋い動きのものになってしまった。実用的には問題ないのでよしとしよう。
午後早めに取り掛かって、途中、風呂や夕飯を挟んで8時過ぎには、蝶番が足りなくて取り付けられない1段を残して、無事全て完成した。
なかなか、いい出来になったと思う。
ちょっと前で佇んで、自己満足に浸ってしまった。


[fin]