久々のリンク

スケートリンク



今日は、クラスごとに出かける校外学習だった。
卒業間近の3年生にとっては、卒業遠足のようなものである。


学校側としては、余暇の過ごし方について、生徒に考えさせる、というねらいで行う取り組みだ。
今回は、子供たち同士で遊びに行った時に、集合や割り勘がかなりルーズでいろいろトラブルの原因になっている、という状況を受けて、目的地に合わせた集合場所を学校以外に設けてそこに集まったり、ひとつの費用を全員で払う場面があるように工夫する、ということがひとつのポイントとなった。


これまでの「ダーツの旅」をやめて、行き先や内容はクラスの話し合いに委ねた。時間と費用だけが制約要因である。
私のクラスは、アイススケートに行こう、ということになった。
生徒の何人かが、水泳をしに通っているスポーツセンターに、リンクがあった、というのがひとつのきっかけだったようだ。
生徒の調べでは、療育手帳があると利用料がゼロになる、というので、費用的にはかなりメリットが大きい。
おかげで昼食は、かなりいい店で、ビュッフェ形式を楽しめることになった。


繁華な駅の一角を集合場所に指定した。
きちんと集合できるか少し心配だったが、すんなりと時間前に全員が集まり、学校に連絡を入れるとすぐ、市営のスポーツセンターを目指した。
私自身、子供時代に相当にうろうろしたエリアだが、ここ10年、再開発もあってすっかり様相が変わっている。
このあたりにはスケート場が昔からあって、そこにはよく通っていたものだが、そこはその再開発で周辺の建物もろともなくなってしまい、今は面影もない。
今日出かけたスポーツセンターは当時なかったものである。


到着してみると、エントランスから観客席つきの地下のリンクがガラス越しに見渡せる立派なつくりで、最上階には温水プールもある。中間の階には大きな部屋や板張りの球技用のフロアが何面もある立派な施設で、おどろいた。
一般に開場される前に、リンクでは会員たちがフィギュアの練習をしていた。何とはなしに豊かさを感じる光景である。


さて、今回のスケート、二人の経験者がいたが、他は全くの初心者。
リンクに入るとすぐ、スタッフに「何の団体ですか」と尋ねられ、ヘルメットの着用を勧められた。
自分たちで決めたものの、つまらない、しんどい、と言い出されるかも、と少し覚悟していたのだが、意外にそういう声はなく、壁伝いに四苦八苦しながらリンク内を歩くことに一生懸命になってくれた。
疲れてはベンチで休憩し、お互いに滑稽なのを面白がりながら、ちょんちょん歩き回っている。
二人の経験者が、手をとってリンクの中に導いてくれたりもして、普段なかなか見られない、いい光景が繰り広げられた。


いかにも初心者の集団、という様子を見て、常連らしい老紳士が時々教えにきてくれた。
私自身はスケート場には、昔よく遊びに行っていたので、普通に前後に滑る分には困らないくらいなのだが、きちんと教わったことがない。
生徒に教えてくださるのにひっついて、横で一緒に教わった。


かかとと土踏まずを合わせるようにして、60度位つま先を広げて立ち、腕を開いて、腰の高さのテーブルを両手で押さえつけるようにして軽く膝を曲げ、体重を片足の足裏に移動させるようにしなさい、足を積極的に動かさず、ただ足裏の移動に合わせて体重を移し、しっかりブレードに乗っていれば、自然と滑っていくのだ、とおっしゃる。


確かにそうやってみると、ブレードの後ろ半分に体が乗って、滑っていく感じがする。
これはそれまでの、せっせと足を前に運ぶ、ブレードの前半分を積極的に使う滑り方と、根本的に違う。


なるほど。
本式にやっているらしい人たちが、片足ずつ長く体重を乗せて滑ることができるのは、この様にしているからなのか、とわかった気がした。
リラックスして滑っている時に、脚を体軸の前に投げ出すようにしている姿勢が、不思議だったのだが、この滑り方をすると、自然とそういう姿勢になる。
さらには、バックで滑る時と前に滑る時で、重心の位置があまり変わらないので、バックスケーティングがとても美しくなる。


肝心の、教わった生徒たちには、ちょっと難しいようで、おじさんが離れたとたんに、またバタバタ、ちょこちょこ、に戻ってしまった。
私ともう一人の担任の二人は、この「滑る」感覚が面白くて、ただ普通にすーっと滑れることの気持ちよさに夢中になってしまった。
生徒たちをサポートしながらも、自分たちもスケーティングを楽しんだ。


微妙な体重や重心の移動でバランスや方向がめまぐるしく変わるスケートは、バランストレーニングとして、楽しい上に有効な気がする。
平衡を保とうとする筋肉がたくさん働いている手ごたえがある。


予定していた3時間、みんな目いっぱいスケートを楽しんで、最後にはリンクの真ん中に全員が集合して、写真を撮ることができた。
心地よい疲労と空腹を抱えて、遅めの昼食を食べに行き、盛大にビュッフェを楽しんで、無事に帰宅させることができた。


なかなか今回もいい行事にすることができたと思う。


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