部誌


それほどと思ってはいなかったのに、やり終えてみてはじめて、結構重圧になっていたのだと気がついた。
昨晩、コーチをしている大学射撃部の、部誌を編集する仕事を一気に片付けたのだが、夜が明けてみるといつになく心が穏やかになっていた。


「趣味じゃないか」と言われてしまえばそれまでなのだが、私は「仕事」ではないものの、「趣味」という言葉の響きではしっくりこない無償の雑用で、いわゆる「勤め」以外の時間を随分忙しくしている。


どこもそうなのではないかと思うけれど、「OB会」や「同窓会」という類は、係に中てられた人が、空いた時間で運営していくしかない。
私のいた射撃部では、初夏に総会とは名ばかり立派な小さなミーティングをして、300人を越える会員のわずか15%くらいから細々と回収されたわずかな会費を、現役の支援と部誌の発行費用に振り分ける。
「総会」に顔を出すくらいに「善意」をおすそ分けする余裕のある人はなかなかなくて、顔ぶれはそう変わらない。私は現役時代にいろいろOB会に依頼をした関係で面子に加えられて以来15年、断る機会を失ったまま、ずっと部誌を作る仕事を請け負っている。


現役やOBから原稿を集めては、編集して1冊の冊子にまとめる、という仕事である。
今年は、今回の号で重要な位置を占める原稿を書くことになっておられた方が、依頼が済んだ後に、命に関わるような大病で倒れられ、しかもその事実に気づくのが遅れたために、(いつも滞りがちな作業が)見事に滞ってしまった。
例年の発行時期を過ぎてから、関係者で善後策を相談して、急遽「発行が遅れた状況」に合うように、編集方法も変更することにした。
変わった部分の体裁を整えるために必要な原稿は、(他にお願いできる人もいないので)自分で書いてしまう。


普段は遠く離れて、年1度の顔合わせを頼りに運営している組織では、配慮を要する方針変更があると、どんな手順で相談を持ちかけるか、結構神経を使う。
ようやく昨晩遅くに、えいっ、と表紙から裏表紙まで1つのPDFファイルにまとめて、印刷発送の担当者にメールで送りつけることができた。


部誌を送らないことには、細々とでも集まっている会費が、ゼロになってしまうのだが、ひとまずその危機は回避した。
ささやかな会で、上手く行かなかったからと言って、とやかく言われる心配はそうないのだが、滞ったままにしておくのは自分の中では相当に気持ちの悪いことだったようである。


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