荷造り


明日、練習がてら射撃場に行く際に、射撃道具を中心に国体の荷物はほとんど持っていって預けてこなければならない。
帰宅なしに続く、2つの遠征の荷造りをいよいよやらねばならない。


北京用のスーツケースと国体用のスーツケースを並べて、思案しながら荷物を詰めていく。


国体でだけ使うものを国体の荷物に、北京でだけ必要なものは北京の荷物に・・・、それは問題ない。
しかし、北京行きの準備は大分に行った後も続く。おそらくちょっとした書類が、こちらの出発に間に合わなくて大分の宿に届くだろうし、向こうで着るチームウェアも大分で受け取ることになるだろう。
大分から東京を経由して北京に行くのであるが、大分を出る時には荷物を家に送りつけ、手荷物ひとつで成田に向かわねばならない。
北京行きの荷物は成田にあらかじめ送っておいて、空港で回収して北京に飛ぶ。
大分で北京への荷物が増えることがわかっている以上、家から持っていく「両方に必要なもの」は、はじめから手荷物に収まる量に手控えて、国体の荷物から移す、なんてことがないようにしておかなければならない。
さらに、海外遠征となる北京行きは、オーバーチャージとの戦いなので、監督といえども機内持ち込みの荷物を工夫し、徹底的に預ける荷物を絞って重量を抑えなければならない。


北京での生活環境についての情報は、大学の学生寮が選手村、というほかはほとんどなく、「念のため」には持って行きたいものがいろいろあるのに荷物は増やせない、とあってなかなか悩ましい。前半は選手で、後半は監督、というのも、字面からは大したことに思えないのに、なんだかややこしく感じられる。
たいがい、遠征には慣れていて、試合前の荷造りなどいつもなら一瞬ですませてしまうのに、どうもうまく行かない。
3つの鞄を前にはたはたしていると、段々どちらの何を準備をしているのか訳がわからなくなってくる。


夜更けに、「まあ、これでいいだろう」というところまでたどり着いた。
何となく不安でバタバタしてしまうのは、きっと荷物のせいではない。
ああ、これは知らず知らずにとっている代償行為なんだな、と一人納得して眠りにつく。


[fin]