最後の強化合宿

合宿の様子



同志社大学の合宿施設と射撃場を使わせてもらって、直前にせまった世界大学選手権の代表選手合宿を行った。
就職試験が重なって1日だけの参加だったり、怪我をしていて撃てなかったりする選手もいて、順風満帆とは行かなかったが、全員が顔をそろえて切り替えの多いハードなスケジュールをこなした。


実質1泊2日の短時間でできることは少ない。
社会人なら「練習時間」を確保されることに「合宿」の大きな意義があるが、学生の彼らは練習機会に比較的恵まれている。
集まって2日しかない期間まで、ゆっくりと練習する機会に充てることはない。


時間のなさを逆手にとって、試合の直前に直面するような状況を作って撃つ、ということを体験させることにした。
あらかじめ1週間前にスケジュールを提示することで、「練習」に割り当てられている短い時間をどう姿勢転換や練習に使うか考えさせよう、と狙っていたのだが、そこまで考えられた選手は残念ながらあまりなかった。


大した経験ではないが、私が海外で試合に臨んだ時に感じたのは、公式練習や前日のフリー練習の有効な使い方の難しさである。
大会では複数種目を撃つことが多いが、どの種目も満足に撃てるとは限らない。
遠征では、十分な実力の他に、初めての場所に短時間で慣れることや、前の種目から次の種目にスムーズに切り替えることを求められる。
積極的に準備するとすれば、そのときに鍵を握る「短時間の調整時間」を有効に使う方法を、あらかじめ模索しておくことだろう、と思った。


30分だけ試合会場で撃てる、という時に、翌日の試合に向けてどう使うか?
あと2種目残っているとき、どちらの種目・姿勢をどう練習すべきか?
自分の中で答えまで導き出しておく必要はないが、葛藤する経験は、あらかじめしておいた方がいい。


夜は、スケジュールや現時点で遠征先についてわかっていることを情報共有し、注意すべき点を確認する。
北京での大会終了後、翌朝早くに日本に向けて発ってしまうプランなので、時間的には最後まで余裕の少ない、極めて忙しい遠征である。
残念ながら観光気分を味わう余裕はほとんどないことを伝える。
「試合自体が何にも代えがたい経験なので、今回はそれに専念し、観光はまた機会を改めてしに行っておいで」と話す。


前回の大会まで監督としてチームを統率してきたSさんに、学生の大会ならではの良さを話してもらい、私も新鮮に聴く。
具体的な渡航上の注意や携行するものなどについては、きめ細かい説明をFコーチがしてくれて、とても助かった。


今回はコーチも3人全員が揃って、心強い布陣であることをあらためて感じた。
選手たちとのミーティング後、スタッフだけで来年度以降の取り組みについて話し合う。
国内で最も建設的な会合じゃないかしら、と思えるくらい、この学生強化スタッフではいろいろなプランを温めている。


さて、最後の強化合宿は終わった。
次に選手全員が顔を合わせるのは、現地・北京である。
いよいよ近づいてきたな、と少し重い気分になる。


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