かぼちゃこわい

カボチャと娘



「はいはい」にはならないのだが、ずり這いでいろいろなところに自分で移動しては、いろんなものを熱心に舐めたりたたいたり引っ張ったりする。


寝返りが早いと、はいはいになかなか移行せずに、ずり這いの時期が長くなるのだそうだ。
心肺機能の発達などと関わりが深いそうなので、すぐ立ったりせず、しっかり這い回ることは大事なのだという。


鈴などいろいろな音の出る積み木、柔らかな布製の人形やキューブ、木製のおもちゃなど、子供用の玩具はあるけれど、いま娘が心奪われるのは、メカメカしいものと、ひらひらくしゃくしゃする紙や布である。
ベビーチェアの車輪やスーツケースのキャスター、板を固定している大型クリップ、雑誌に付箋の貼ったもの、あらゆる布製品についているタグ…。
観葉植物もたくさん置いたままなのだが、アビスの葉は先端をかじられてしまった。


そんな娘が台所にやってきたので、そうだそうだ、と調理前のかぼちゃをごろんと娘の前にころがしてみた。
かぼちゃは離乳食の中で、娘の一番の好物である。


娘は、ささと離れて、相方に擦り寄るようにして眺めている。
どうも怖いらしい。
ちょっと近づいては手を伸ばしてみるが、触れずにひっこめる。あー、あーと困ったような声を上げる。


改めて見てみると、「かぼちゃ」は濃淡とりどりの緑色にピカピカと光っていて、凹凸した表面は怪獣の皮膚のようでもあり、なかなか威圧感がある。


相方と、たしかにこれは怖いな、なんて話になったのだけれど、「自然派育児」というような部類の本をいっぱい読んでいるのに、一番身近な自然物にも触れさせてなかった、と反省しきりだった。


「にんじん」なんかかわいらしいからいけるんじゃない?
と、かぼちゃを隠して、にんじんを前においてみた。
土つきで、思ったほど「かわいく」はなかったこともあるが、かぼちゃの時と似たような反応だった。


初めて見るもの対しては、関心を示しつつ対応は慎重にする、というのは、まあ適切な反応だよ、と娘の反応に感心する。
いろいろなものを、順番や段階を良く考えて見せていかなくては、と思う。


[fin]