本棚ガード

ガードした本棚



娘が前向きにずり這いできるようになった。
まだ、ゆっくりとしたものだが、気になるものの方へ自分から移動して行って、触ったり舐めたりする。


早速、低い本棚から文庫本をひっぱりだしてくしゃくしゃっとされてしまった。
たくさんある中から、娘の普段いるところから遠いところにあった「塩野七生」を引っ張り出していたのだが、相方が早くに見つけてくれたお陰で、未読のその本は、無事読める状態で救出された。緑色の背表紙が気に入ったのだろうか。


いよいよ対策がいるなあ、今晩作業しよう、と心に決めて家を出た。
すでに何枚かシナベニヤを買ってあって、それをどう固定するかを、ふとした合間に思案する。


ひとときのことなので、このために棚に穴を開けたり、傷つけたりせずに済ませたい。
しかし、ひとときとは言え、その間その本棚を使わないわけではないので、簡易に板をつけたりはずしたりできるなら、それに越したことはない。
かといって、娘が触ったら板が倒れてきた、とか、突起物で怪我をした、とかいうことはあってはならない。


簡単なようで、なかなか難しい。


クリップのようなもので固定の足場を作ってやれば、傷つけずに済む。
外れにくく、しかし必要に応じて取り外せるようにするには、閂のような仕組みがいいんじゃないか、と考えた。
「大き目のペーパークリップを4箇所くらいつけて、その背中になにか差し込めばいいな」
と、帰りにスーパーの文具売り場に立ち寄って、使えそうなものを物色する。


ペーパークリップは、いいサイズのものがすぐに見つかった。
「差し込む」のにいいものはないかと、さらに観て回る。
足の長い、細身でフラットなクリップでもあれば、簡単に組み合わせができるなあ、と思ったが、そんなものは見つからない。
仕方なくペーパークリップだけ買って帰った。


棚板を挟んでみると、ペーパークリップはいい感じだ。
さて、何を差そうか。
あてもなく板を立てかけてみると、どうもそれほど強度は必要なさそうだ。


「!」


相方にヘアピンはないか尋ねてみる。
普段、使っている様子もないのに、さらのヘアピンをたくさん持っていた(女性はみんなそういうものなのだろうか)。
クリップの幅に負けない長さがあるかどうかが心配だったが、試してみると、ぴったりだった。


取り付けてみると、がっちりと固定されて、板は引っ張ってもびくともしない。
しかし、ピンを抜けば、板をすっとずらしたり外したりすることができる。
見た目も、娘が引っ張り出せない程度に上下にスリットの入ったデザインになって、なかなかスマートである。


完全に隠してしまうのでなく、子供の興味もかき立てつつ、物も安全。いいんじゃないかな。
かまり立ちを始めるようになると、さらにいろいろ工夫が必要になってくるだろうけれど、他の棚の目隠しにも応用できそうである。


[fin]