R大の合宿


夏合宿に教えに来て欲しい、と春先から頼まれていたのだが、直前に決まるであろう様々な予定がその頃から見え隠れしていて(実際、直前までこの時期の予定は二転三転した)、「予定がはっきりしないから・・・」と確約しないままずっと来た。
これまでも幾度か尋ねられたが、あらためて今月に入ってからも「予定はいかがですか?」と尋ねられ、この日ならば、と1日コーチを引き受けた。
熱意に根負けする、というのはこんな感じだろうかなあ、などとちょっと無責任に感じ入ったりする。


自分のチームはほったらかしにしたまま、よその大学や協会、選抜チームやらの練習や合宿にばかり教えに行っている。そういう点では我ながらずいぶんひどい。
この夏も、どうしても行けない時期に、しかも少し遠くで合宿が組まれていて、メニューを組むところだけ知恵を絞って、後は学生任せだ。
私自身が学生の時分(というともう10数年前になるが)、直近の卒業生以外に頼る先輩はなく、合宿なんかで何をどうするかは、各々が考えるものだった。横からごちゃごちゃ言われず、自分で確かめたいことを黙々とやる、というのが性に合っていたけれど、チーム全体としては、よほど主将たちがしっかりしていない限り、なんとも物足りない雰囲気の行事になることは知っている。
直近の卒業生もあまり世話を焼いてくれない年が増えており、私も「遠隔操作」みたいなやりかただけをしているようでは、低迷もあたりまえで、心ある一部の部員には大変申し訳ない。


R大の練習を見に行くのは2回目である。
ずいぶんと部員が増えて活気に満ちており、いい雰囲気だった。監督やコーチを務めるOBの姿も(年配の方が多かったが)ある。
面識のある部員から声をかけて、聞き出しながら一緒に考えたり、提案したりする。
昼食後には、1年生対象に1時間半ほど講義もした。


感覚と動作は本人きりわからないし、その質については千差万別な上、変化していかなければならないものでもあるから、外から働きかけられることは、方向性を説明し見通しよくすることしかない。
してもらえることがそこまでであり、そこの上に自分で模索や構築を進めなければならない、と知っている選手。
できることがそこまでであり(まずそこまでをしっかりできるかどうかが重要なのだが)、そこから先の部分は、たとえ一見こちらの思っているのと違うようなことをやろうとしていようとも、選手が自ら切り開かねばならないことを知ってじっと我慢できる指導者。


相互作用があってはじめて動きはじめること、というのは、歩み寄りの持続とちょっとした幸運の要ることだなあ、なんて考えたりする。


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