Mくんを会わせる


妹から、友人に「いい人」いないかしら、というような相談があった。
名前は私もよく聞いている、「幼馴染」といっていいくらいの古くからの友人だ。


よく聞いてみると、仕事上Mくんと業界に若干の重なりがあり、専門は同じだなあ、と思い当たった。
キャラクターにはもちろんアクがないわけじゃないし、見目麗しいかといわれりゃ難点は数えあげられようが、重ねた年齢なりの年輪であり味わいで、Mくんは一押しできる人物だ。
じゃ、会わせてみましょう、ということになり、双方に意向をたずねてとんとん拍子にOKということになった。


妹の友人は妹宅へ遊びに行ってもらい、Mくんにはうちへ一旦来てもらってから私が妹宅へ連れて行く、という段取りになった。
Mくんには独身時代に幾度か来てもらっているが、結婚して子どもが生まれてからは初めてだ。


別に、料理屋や喫茶店で顔を合わせてもらってもよかったのだが、私や相方そしておそらく妹にも(あらかじめ確かめたわけじゃないが)家に来てもらう場面があったほうがいいなという暗黙の了解が働いた。


長く独身をやると「家庭」は億劫に感じたり、抱くイメージに具体性を欠いたりするきらいがある。
どのくらいの訴求力があるかはわからないけれど、私も妹も、未知の相手に逢う前に「あ、家庭っていいかも」と思う取っ掛かりを少しでも感じてもらえないか、とひそかに頑張ってみたのだ。


あいにくの空模様、という感じだったが、なんとか雨は持ちこたえてくれた。
Mくんは、我が家で相方の作ったうどんに舌鼓を打ち、ご機嫌で笑顔を振りまく娘相手にしばし顔をほころばせてから出発した(と思う)。
妹宅では、昼前から来ていたという妹の友人とともに元気爆発という感じの姪っ子二人が待ち構えていて、その後もちょろちょろと顔を出した。


M君の紹介になりそうなエピソードを紹介した後は、ちょっと元気すぎる姪っ子を引き連れて2階に上がったけれど、妹によれば話もかみ合いスムーズないい「初対面」になったんじゃないか、ということだ。


子供の「超元気」な気に当てられると、うわ・・・と億劫に感じてしまう逆効果もあるから難しい。
縁ばかりはわからないものだが、相方はじめちびっ子たちの助けも借りて一役を果たし、ひとまずほっとする。


うまくいくといいな。


[fin]