風味絶佳


風味絶佳 (文春文庫)
山田詠美「風味絶佳」を読み終えた。


通勤の電車内だけが、この文章を書いたり読書したりする時間であるので、読書量とブログの量は、たくさん書けば読書量が減り、たくさん読めば書けなくなる、というゼロサム関係にある。
ここしばらくは、頭の中が静かで余力もある「行き」が読書、疲れているが余勢を駆ってそれなりの回転をみせる「帰り」が作文という区分けが基調になっている。
聴く音楽も、「行き」はここのところずっと「クラシック」で、帰りは「歌もの」。


PAY DAY!!! (新潮文庫)
山田詠美は「PAY DAY!!!」以来である。


愛しみたくなる感じの短編が並んでいた。1つめの「間食」を、道半ばで読み終えてしまう。しかし次の話をすぐに読みはじめるのがもったいない、違う話の印象でこの話の読後感を乱してはいけない感じがして、本をカバンに戻した。次の話は明日にしよう、と決める。
残りの時間は、もう一冊持ち歩いていた全く違う思想ものの新書に充てた。
そうして毎朝1篇ずつ、どれも職場への道半ばで読み終えて片付ける、ということを繰り返して1週間。6回の通勤で読み終えた。
あとがきを読んだら、解説の高橋源一郎さんも同じ読み方をした、とあって、なんだかおかしかった。


私自身の中高校生の頃に華々しいデビューが重なり、時々読んできたが、こわごわと覗き込むような読み方しかできなかった。それでも気になって、時々手にしたが、いつも「あんた、だめね」と言われているような心地がした。
私自身が年を取りそれなりに「男」の部分を抱えるようになって、「ちゃんと」読めるようになってきたように感じる。ごく最近のことだ。


10年・20年前に読んだ作品を、今読んだらそれぞれに全く情景が違って見えるだろうと思う。
疎外感を強く感じた作品も、また手に取ってみようか。


[fin]