さらばワゴンR


金曜日に、「お車引渡しができるようになりました」とKさんから電話があった。
家まで持ってきてくださるのだが、受け取れそうな時間には帰宅できそうになく、来週になんとか、と先送りした。


そこそこに帰宅できる算段がついたので、月曜日の今日、夜8時に実家で受け取る約束をした。
10年間お世話になったワゴンRエアロRSから、細々した荷物をすっかり降ろし、ルーフキャリアも取り外す。
射撃用の大きなカバンを残して、すっかり空っぽにすると、小雨の中実家へと向かった。


走行距離110030km。
大方は能勢への練習行脚であろう。高速を使わずに熊本まで走り、その先さらに鹿児島県の佐多岬まで行ったこともあった。
給料を得る身分になってようやく手にした初めての「自分のクルマ」には、それなりにいろいろな思い出がある。


実家に私が到着するのとほぼ同時にパレットがやって来た。
一度試乗車に乗っているのでそれほど驚かないが、余分なウィングのない、淡いゴールドカラーは、このクルマのデザインにはしっくりしていているようで、やわらかな曲線がより印象的に感じた。


ワゴンRの時と同じ色にしたこと、なんだかんだ違いは挙げればきりはないが、どことなく似ていることが、スムーズに新しい車へと気持ちを切り替えることを助けてくれた。


ETC・カーナビ・オーディオ類など、内部の装備は、ここまで「標準」の水準は変化したのかと驚く。
キーレスエントリー、電動スライドドア、可変ミラーも、このサイズのクルマに付いてしまうことに、あらためてちょっと面白さや微笑ましさを感じてしまった。
車内が広く、開口部も大きいのでベビーシートの取り付けも随分楽だった。取り付けても、前のシートまで随分余裕がある。


KさんとともにワゴンRは去っていった。
ぽつんと残ったぴかぴかのパレットが後を継いで、まだ始まったばかりの家族と共に、これから一緒に走っていく。


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