藪投手

藪投手fromサンスポ.COM



今シーズンに向けても、たくさんの日本人がメジャーリーグに挑戦した。今年はベテラン選手が故障やブランクと戦いながら這い上がるタイプの挑戦が目立った。


高津投手がホワイトソックスから解雇され、桑田投手は怪我から再起して最後までロースター入りを争ったが最後にマイナー行きを通告され、心を打つことばで引退を表明した。肩の故障から浪人を余儀なくされ、メキシカンやベネズエラのリーグなどで再起をかけてきた野茂投手は中継ぎとしてぎりぎり開幕メジャーに滑り込むかに見えた矢先に足を痛めてマイナーリーグで開幕を迎えた。


たくさんの挑戦者をめぐるニュースを通じてMLB情報にに触れる機会が増え、一昔前では想像もできなかったほどいろんなことがわかるようになった。
江夏投手が日本球界を引退した後、メジャーのキャンプに参加しているニュースを見たのが、MLBを身近に感じた最初だったように思うが、その時は、「挑戦している」ということのほかはさっぱりわからなかった。今では、ただ「レベルが高くて大変な世界なんだろうな」と結果だけ眺めるのではなく、等身大の様々な選手の悩みや戦いが少しずつ見て取れるようになってきている。


阪神の苦難の時代を孤軍奮闘といった感じで支えてくれていた藪投手は、3年前FAでアスレチックスへ移籍し4勝0敗となかなかの活躍をした。早々にメジャー移籍を希望して、というのでなく、タイガースでの役目をしっかり果たしてから、最後の挑戦としてメジャーを選択して円満に手続きを踏んで移籍する様に、ファンの一人として、素直にこれまでの感謝と活躍を祈る気持ちが涌いたものだった。
ところが、翌年ふっつりとニュースから姿を消した。気になりながらも、もう引退してしまったのか、とさえ思った。
今回のメジャー再挑戦で流されたニュースによって、浪人生活をしていたこと、練習パートナーもなく異国の地でトレーニングとネットを相手の投球練習で再起に備えてきたことを知った。


数日のことではない。年単位のことなのだ。
どれほどの強い気持ちが必要であろうか…。想像を絶する。


3月末、次々とカットが宣告され、最終ロースター入りを目前にたくさんの選手が涙を飲む。藪投手がジャイアンツの最終ロースターに残ったことを知って、本当に心からうれしかった。
今日のニュースによれば、登板も果たし、無失点で切り抜けた、という。


たくさんの選手の必死の生き様がそれぞれに心を打つ。
シーズンはじめの、本当に野球界全体からすれば小さなひとコマかも知れないけれど、今回の藪選手のニュースは、ひときわ強い感銘を私に与えてくれた。


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