全国高校選抜合宿・2日目


さて二日目。
夜にばかりたくさん話をしても、実際に撃つことと結び付けにくいだろう、と日中の練習時間の中で講義を挟んで夜は軽めにすることに決めた。


射撃場に着いて準備だけしてもらったところで部屋に集まってもらい、ホワイトボードを使って技術論を1時間。
射撃のプロセスを要素に分け、それぞれにどうなることを目指すのか、という内容を話す。
どんな風に伝わったろうか。生徒たちはこちらも驚くほどの真剣さで聞いていた。プロセスのどこに注意を払うのかで異なるメニューに取り組むよう伝えると、さっと射座へ散っていく。


昼の休憩では、手応えがあった、とうれしそうに、弾着のプリントアウトを手に話しをしてくれる選手が何人かいて、ほっとする。
昼食休憩明けに、ふたたび集まって感想を聞いた後、「練習方法」・「メニュー」についてさらに30分ほどの説明。簡単な「メニューの作り方」と注意点を示して再び練習へ。


撃っている様子を見ることができるのは、今日だけである。各自のフォームなどについて助言をするのは不可能だ。それまでに「完成」させてきたものに、変更を加えることは、いつも危険と背中合わせである。助言をどう受け取るか、という射手のタイプにも合わせて、長い時間の中で慎重にやらないといけない。
後ろから観察して、昨日集めたワークシートの余白に鉛筆で、感想と私なりの分析を書き込むことにした。ワークシートは指導者を通じて返却してもらい、本人にメモの内容を伝えるかどうか、伝えるならどう伝えるか、は一番身近の指導者の人に委ねるためである。


夜の講義では、フォームについて、私なりに考える「構造」について話した。生徒たちには、全員に実演にも付き合ってもらった。先生方にはこの内容が一番面白かったようで、実演の様子を写真に撮ったりして、会場全体がにぎやかに盛り上がった。
練習で撃った時間は4時間くらいだったのだが、生徒たちは昨日よりも、かなり疲れたようである。
ここまでで一人ひとりとも少しずつ、話す機会が持てるようになってきたのだが、みなそれぞれに面白く、なかなかしっかりしていて、さすが選抜メンバーだなあと感心させられた。


講義の後「人事異動の関係で今年から急に顧問をすることになった」という先生が不安そうに、しかし熱心に質問に来られた。
よく判らないスポーツに、突然指導者として加わらねばならなくなり、全国大会だ、と公共の交通機関もない遠県の山奥までひとりで生徒を連れて行き、いきなり割り当てられた運営の仕事をしながら試合や合宿を見守る・・・大変だと思う。


選手を経て学校の先生になり顧問をするケースは稀で、程度の多少はあっても、ここに来ておられる先生方のほとんどは、そうやってこのスポーツの世界に入ってこられた。
初めは門外漢であっても、他校のベテランのクラブ指導者を手伝ったり真似たりする中で少しずつ理解をし、やがて企画・運営を担っていく。そんな人材や努力の積み重ねで、高校の射撃スポーツは、ここまでの規模と内容を備えるまでに至ってきたのだということが今回よくわかった。
誰がなんと言おうと、新しく射撃を始める人のほとんどは、高校射撃部と大学射撃部で「射撃」と出会うのだ。中でもトップ選手のほとんどは高校射撃部で門戸をたたいた者である。ふいに投げ込まれた上、忙しい合間を縫って顧問業をしている人たちの集まりであるので、競技指導の専門家から見れば問題点はいろいろ指摘できるであろうが、組織の功績は大変なものである。
ここが少しでも上手くいくように、私に助力できることがあるならしたいものだと思った。


[fin]