モビール

モビール



娘の出産を前に、相方や相方の母はいろいろなものを作った。
産着の上に着る棒針編みのベストや、蒲団やかごの上にかける鉤針編みのアフガン、タオル地を縫って作った人形・・・。


その中に、モビールにするための小さな動物や雲のぬいぐるみもあった。
なるほどなあ、メリーもたしかにこうして手作りできるものである。
そろそろ、物にも関心を示す兆しがあるので、よし!と託された仕上げの作業に取り掛かることにした。


先だって、四六時中テレビに生活を支配されないように・・・とテレビカバーなるものとそれを掛けるフレームを、ラックの上にラミン材を組み合わせて作ったのだが、その残りを支柱に使い、腕材には新たに細い5ミリのラミン材を買ってきた。


モビールは、モーメントの原理そのものであるから、実にシンプルなものなのだが、こういう風に配置したい、というデザインの側を優先して考えるとなかなかに難しいと予想された。
子供向けのおもちゃが紹介されている書籍やカタログに登場するモビールを見て、アイデアを膨らませつつ、相方の母が作ってくれた5つのかわいらしいクッションを、ああでもないこうでもないと並べて、まず配置を考えた。
支点からの距離や左右の配置だけでなく、糸の長さで位置にバリエーションをつけつつ、つるした腕が回ったときに、ぬいいぐるみや糸とぶつからないようにするのが大事なようである。


デザインを決めたら(釣合うかどうか裏づけはなくても)いきなり作業するしかない。
モビールは腕が長くて両端が重いほど、動きがのんびりとしてバランスも崩れにくい。初めは、ぬいぐるみや腕の両端に錘を足す方法を考えていたのだが「赤ちゃんが触っても大丈夫な錘」というのはなかなかない、ということに気がついた。
腕の両端に袋ナットを固定して重みをつける以外は錘を使わず、水平方向はバランスをとるために柔軟に配置を調整しながら組み立てることにする。


つるす位置を固定しても、糸の出る位置が少し変わるとどちらかに傾いたりして苦労したが、なんとか夜には完成させることができた。見ると作るでは大違いである。
100円で売っていたミニクランプとビニールタイでベビーベッドに固定すると、いい高さにクッションが来た。
結果オーライ、という感じは否めないが、出来上がりは上々だ。


娘は、ぎりぎり手を伸ばすと触れられるくらいのところを通り過ぎる馬のぬいぐるみを、じっと見ている。
子どものために作る、というのは、これまでにはちょっとない感慨がある。


[fin]