備える


何かあったらすぐ中断して飛び出さないといけない、とどこかで思いながら過ごすのは、意外に消耗する。


面会時間の終わり際に病院に顔を出す、というだけで結果的には何も変わらないし、顔を出したときも、何か気の利いたことをするでも言うでもない。
「何かあったとき」もそれはたぶん同じなのだろう。


本人の不安と大変さとは比較にならないはずだ。
そばにいるだけの、なんとも踏ん張りようのない感じの「周囲のひとびと」というのは、「本人」にかえって気を使わせたり、ちょっと滑稽だったりするけれど、ある役割を果たしてもいる…?
実はよくある「当事者の周囲」を生み出す、典型みたいな状況かも知れない。


連絡はなく、夕方にメールで状況を聞いて、これまでと同様、面会時間の終わり際に病院を訪れる。
まだ痛い周期に間隔があるが、少し進んで持続的な痛みが出ており、ひょっとすると夜中に連絡をすることがあるかもしれません、とのこと。
相方の母と、いよいよかな、と病院を出る。


夜中いつでも飛び出せるように用意をして、早めに寝ることにする。


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