圧力鍋がやってきた

WMFパーフェクトプラス



ちょうど1週間前の土曜日の話。


先日の「おはぎ」作りの時に、相方とは
「小豆を煮るのに時間がかかるねえ」
なんて話になって、「圧力鍋」のことが少し話題になっていた。


そこへ「秋の恵み」と、相方の父からたくさんの立派な栗をたくさんいただいた。「銀寄」という大粒の姿のよい栗の品種で、しばし見入ってしまうほどに立派なものだ。
「これは定番の「栗ご飯」以外になにかお菓子のようなものを作りたいねぇ」
という話になり、連想として正しかったのかどうかよくわからないが、小豆同様に「煮る」工程が欠かせないことから、
「これを機会に圧力鍋を買っちゃおうか」
ということになった。


こういう買い物の時は、ネットの情報や「ピカイチ事典」を参考にして買うことが多いのだが、今回は、そもそも使ったことがない道具であるために、商品評価の記述だけでは善し悪しがよくわからず、質感や量感も寸法情報からどうも上手く掴めない。
「これは値段の問題じゃないね」、「しっかり実物を前に店員さんに説明してもらって考えるか」
という結論になった。
思い立ったが吉日、と支度もそこそこに二人して電車に乗りこんで、近鉄百貨店の生活用品売り場に行った。


鍋売り場には、それぞれにメーカーごとの担当の販売員がいて、丁寧に説明をしてくれる。初めに声をかけられたのはWMFの販売員さんだったのだが、わかりやすくて熱意のこもった説明に、店で買うのは楽しいなあ、と実感。他のメーカーとの比較について尋ねると、それぞれに特徴があって、どこにポイントを置くかですね、とビタクラフトの販売員さんに説明を引き継いでくれた。おたがいに寛容な感じが、とても心地よく感じられた。
フィスラー・ティファール・ビタクラフト・WMFそれぞれに見比べて、説明も聞いた後、一旦売り場を離れて、二人で相談することにした。


「ピカイチ事典」では、ティファールのクリプソコントロールという、圧がかかった時点でスタートするオートタイマーのついたものが「革命的」な商品として取り上げられていた。火を弱めるタイミングと加熱時間が命なので、そこの部分で失敗がない、というのは重要な要素なのだと読み取れた。買いに行くときも有力候補としていたのだが、ティファールの製品は一目見て、少し尻込みしてしまった。すごくデザインが大げさで、嵩高い印象なのだ。
「『気軽に使おう』という意欲を削ぐごつさだねえ」
という見解は二人の間で一致した。実物はなかったものの、タイマーの部分が壊れやすそうに思えたのもちょっとマイナス。キッチンタイマーは普段から使い慣れているので、圧が十分にかかった時点を見逃さないか、だけが不安要素だったが、どうもそれほど圧がかかるまでに時間はかからないようだし、インジケーターは他のどの製品も見やすく作ってある。「使い慣れればいいじゃない」という結論になった。


素っ気ないほどに構造がシンプルで、鍋自体が軽いビタクラフト(アメリカ製らしいといえば、アメリカ製らしいかも)。一見したところ普通の鍋にしか見えないのに、作りには安心感があり、最も気軽に使えそうである。ただ、圧力鍋初心者が調理の時に頼りにせざるを得ない、付属のクッキングブックが「ただ今、編集中」ということで、見送ることになった。残念。


フィスラーのロイヤル圧力鍋とWMFパーフェクトプラスは、ともにドイツ製ということもありよく似ている。いずれも完成度の高い、洗練された印象である。少なくとも日本では圧倒的にフィスラーの方がシェアが大きいようで、圧力を2種類使い分けられるなど、セールスポイントもある。しかし、いろいろ取り回してみて、WMFのパーフェクトプラスの方が、扱いやすさを感じたのと、デザインがとても気に入ったこと、日本ではそれほどメジャーではないものの、貝印が代理店として後についていることなどから、消耗パーツなども心配なさそうだと考えて、こちらを買うことにした。


ふたの動きのスムーズさを確かめてから、梱包してもらったり、クッキングブックを確認して、「栗」の調理方法がないとわかると、後日調理方法を、自分で調理してみて連絡してくれるなど、「百貨店の買い物」ならではの細やかさが嬉しかった。


しばらくして、栗は、クリームや栗まんじゅうにみごと変身。
ポトフはじめ、さまざまな煮物にほぼ毎日といっていいほど大活躍している。ちょっと心配していた「圧がかかった時点」の把握も問題なし。圧が上昇するときには、特徴的な排気音があるので、少しくらいほかの作業をしていてもインジケーターを見落とすことはあまり考えられないんだなあ。とても短い時間で、香り高く柔らかく仕上がるのは、本当に驚きだ。
オプションのガラス蓋を「キャンペーン中なので」、とスペアパッキンとともにつけてくれたのだが、加圧調理後に普通の鍋として引き続き調理する上で、とても重宝している。


…あとで恐る恐るネットでも価格を確かめてみたのだけれど、ちっとも割高でなかったことにさらに驚いてしまった。
本当にいい買い物をしたなあ、と台所で見るたびに嬉しくなっている。


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